『剣遊記14』 第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。 (13) なんだかんだと言いつつ、地底湖の調査自体は、どうやら必然事項となりそうな雲行きだった。
「こいつら絶対、遊び半分以上の気持ちになっとんばい☢」
孝治の愚痴的なつぶやきの先には、早くも先ほどまでの騒動を忘れた感じ。湖の前でたむろしている荒生田、日明、二島たちがいた。
彼らはわいわいと、まるで子供のように探検の行く先を楽しんでいるようだ。ここで友美が、右手人差し指を自分の口の前で立てる仕草を取った。孝治に向けて。
「しっ! これ以上変なこと言わんほうがええばい⛔ 絶対先輩たちに聞こえるっちゃけ⚠」
「わかっちょうって☹」
孝治は仏頂面の思いになって、友美にそっとうなずいた。
『あたしにも聞こえたっちゃけどね☻』
宙に浮かんでいる発光球からは、涼子がくすっと微笑んでいる感じの声も聞こえた。こちらはまあ、孝治と友美以外には聞こえない声であるから、一応安全と言えるのかも。
このような調子でうしろから眺める孝治、友美、涼子の眼前では、少し状況が変わってきているようだ。そこでは地底湖の前で腰を落として水の状態を調べている、一応科学者らしい振る舞いをしている日明の姿があった。
「ふぅ〜む、この湖の水はどえりゃあ塩かりゃあがね♋ 簡単にわかることだぎゃ、どうやらこの湖は、海の水と繋がっとうようだがね✍」
日明は偉そうな口振りで、右手ですくった湖の水を、舌を出してペロペロと舐めていた。
「と、言うことはもしかして、池田湖のモンスターと、なにか関係があるとですか?」
「まだ断言するのは早いっち思うっちゃけど✋」
これまた真面目な顔して日明に尋ねる裕志に向け、孝治は慎重な気持ちになってささやいた。
「湖のモンスター自体が、そもそも正体不明なんやけ、この地底湖との因果関係は、今んところ全然不明なんやけね✄✑」
「う〜ん、今わかったっちゅうのは、この地底の湖が、海と繋がっとうっちゅうことだけっちゃね⛴」
荒生田も腕組みをして、これまた偉そうにうんうんとうなずいていた。
「どうせまた、碌なこつ考えちょらんやろうねぇ⛔」
孝治はこのような先輩の姿勢に、まったく期待をしていなかった。それよりもむしろ、不安感ばかりを増幅させてくれるのだ。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |