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『剣遊記14』

第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。

     (10)

 そんな一行の前にやがて、洞窟内での地下水が溜まったのであろうか。満々と水をたくわえている地底湖が涼子の霊光の下、その全体像をあらわにした。

 

「こげな所にこげな地下の湖があったっちゃねぇ……どの観光ガイドブックにも、こげなん載ってなかったとにねぇ♋」

 

「ほんなこっちゃよ

 

 裕志の予想外を表現した驚き方に、孝治も同意でうなずきを入れた。また二島のナレーションにも、ますますの力が入っていた。

 

「これは想像もせんかった事態となって参りました☻ 我々の眼前に新たなる脅威となりはるんでしょうか ここ池田湖近くであろう地底において、水量豊かな地底湖が、突如出現しはったんでありまんがな これぞまさしく、事実は小説よりも奇なりと申しまして、この世の常識は根本からの大変動を余儀なくされはるようでおますがな

 

「しゃーしかねぇ

 

 相変わらずうるさい二島のおしゃべりに、孝治は顔をしかめる思いとなった。だけどもしかすると、これは本当に新発見なのだろうか。確かに孝治たちはちょっとした冒険心で、池田湖のモンスター探しに挑んだ――とは、やや言い難くなっている現状だが、早くも別の余興気分になって、池田湖と開聞岳の周辺を探索した。それが本当に前人未踏なのかどうかはわからないが、観光ブックには完全に未記載である地底の湖に、偶然でたどり着いたわけなのだ。

 

 繰り返すがこの僥倖は、本当に孝治たちの新発見かもしれなかった。孝治の頭に、自分でも珍しいと言えるような下心が湧いてきた。

 

「もしかしておれたち、これで有名人になれるかもしれんばい……☻」

 

 友美もすぐに、孝治の考えを察知してくれた。

 

「つまりぃ、こん湖んことば指宿の観光協会に報告したら、ものすご感謝されるかもしれん、っちゅうことっちゃね☆♡」

 

 ここでも友美の勘の冴えは、超一級品といえそうだ。やがてふたり(孝治と友美)の脳内に、輝かしい未来図(?)が夢想化――あるいは妄想化されていった。


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