『剣遊記11』 第三章 旅の恋は一途。 (20) この間にも、旋風がさらに巨大化。あげくはグオオオオオオオオオオッッと、見事なFスケールの竜巻にまで成長した。
「うわああああああっ! みんなぁ、なんかにつかまれぇーーっ!」
折尾が慌てて、すぐ近くの木にしがみついた。
「うわっちぃーーっ!」
「きゃあーーっ!」
孝治も友美の右手を自分の左手で握り、折尾と同じようにして、すぐ近くの木にしっかりと全身で抱きついた。そのあとは特に逃げる気もなし。逆に余裕の口ぶりに戻って、折尾に言ってやるだけだった。
「ま、まあ、そげん怖がらんでええとですよ☀ これ以上なんもせんかて、そげん飛ばされるっちゅうことはありませんけ♠♐」
まさに経験者は語る――であった。
一方で帆柱も、そんな余裕の孝治に合わせていた。
「ま、まあ、一応大丈夫っちゃ☀ これはシルフの風やけ、吹っ飛ばしてええモンとそうでないモンとを、的確に分けることができるそうやけ☜☞」
帆柱自身も、すでに泰子の能力については、孝治から耳に入れていた。だからこちらも余裕で、四本の馬脚でどっしりと、地面で踏ん張り続けていた。
「そ、そうか……♠」
これらの声を耳に入れたらしい折尾が、どこか及び腰の感じで、帆柱の足元まですり寄った。顔がヒョウなので、服を着ていなかったら完全に四つん這いの獣と同じであったろう。それと同時だった。中型規模の竜巻がだんだんと収まり、やがて静かなそよ風となった。それから泰子の本体が地上に浮かび上がるまで、大した時間は必要でなかった。
風から人体への還元である。
「どうかしら?」
この実力を自慢そうに得々と述べている者は、当の泰子ではなかった。
「これならたとえ山賊が攻めてきたとしましても、すぐに全員吹き飛ばしちゃいますわ✌」
自分がなにをしたわけでもなく、させた沙織が偉そうに言ってくれた。
「あんだっちゅうの♨ 自分がしたわけでもなかっちゅうとにぃ♨」
孝治の陰口など、まったく意にも介していなかった。むしろ自分の鼻を、さらに高々とさせているばかり。
「この他にもわたしたちは、風の力で飛んでくる弓矢や槍をかわしたりっとか、枯れ葉を散らして、敵の目をくらましたりっとか☆ とにかくなんでもできますから✌ これってすっごい戦力と言えません?」
「そい、でらっと実行すんの、わたすなんだけどぉ……☁」
泰子がうしろで、小さくつぶやいていた。
「わ、わかった……☁」
もはや周辺の森を再び荒らした事態には、目をつぶっている感じ。返す言葉も失ったらしい折尾が、仕方なくといった様子でうなずいた。沙織たちに、背中を向けた格好になってから。
「……ど、同行を認めよう……それにしても、またさっきみたいな自然破壊をしてくれたもんだよなぁ〜〜☁」 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |