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『剣遊記11』

第三章 旅の恋は一途。

     (14)

 このロマンチック的状況を、一部始終こっそり眺め続けていた者――それはもちろん涼子であった。

 

『ふぅ〜ん♥ これで未来亭に、新しか恋人カップルができたっちゅうとこやろっかねぇ♡ やけど帆柱先輩、すっごい堅物男なんやけど、ほんなこつ大丈夫やろっかねぇ、こん先? それに沙織さんかて、すっごいやり手って聞いとうっちゃけど♥』

 

 つまり涼子に言わせれば、性格が見事に対照的。これは将来の離婚原因の、一番の言い訳となる話でもある。

 

 そんな風で、涼子がつまらない(それも無責任な)未来予測を描いているときだった。いきなり浴場の扉のほうからメッキメキメキメキメキッバキィッと、物が壊れる激しい音が響き渡った。

 

『きゃっ! なにっ……って、孝治やない!』

 

 初めは驚きのあまり、涼子は自分の心臓が停まるかと錯覚した(矛盾した話)。ところが扉を押し倒して現われた者たちは、孝治を先頭に泰子や浩子の面々であった。それも帆柱が、沙織を介抱している現場の真っ最中に。

 

 ここで冒頭である、大騒ぎのシーンとなるわけ。

 

 なお、『人の恋路を邪魔するやつは、馬に蹴られて死んじまえ☠』との格言があるが、これはたぶん、ケンタウロスには当てはまらないだろう――と思われる。孝治にとってはまさに、不幸中の幸いであろうか。


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