『剣遊記11』 第三章 旅の恋は一途。 (10) ケンタウロスと人間が、どうやればいかなる体勢で(自粛)できるのか、まったく想像もつかなかった。しかし、ついにふたり(帆柱と沙織)は、行き着くところまで行き着いてしまったようなのだ。
「沙織もやっとが、本懐達成べぇ♡」
扉に左の耳を当てている泰子が、今や涙目になっている口調でつぶやいた。そんな泰子の態度を見て、孝治は逆に、大きな違和感を抱いていた。
「友達がもしかしてドエラかこつなっとうとに、なしてそげな感激みたいに言えるっちゃね?」
「んだがらなぁ♐」
泰子もさすがに困った顔になりながらも、一応孝治に答えてくれた。
「前にも言うたっけ、沙織だば高校生んときから、とにかくめんこえ男性という男性から、ベコ(牛)に逃げられるみでえにしょしいぐれえにフラれ続けて、やっぱりしょしいけどきょうまで彼氏いない歴十九年なんだがらぁ〜〜☁ で、前に言うた本人さの問題ってぇ、たぶんこれだど思うんだべぇ、友達としてはこいはとても祝ってあげなきゃなんねえことなんだぁ☀」
「それってほんなこつぅ? なんか信じられんばぁい★☆」
泰子の話を延々と聞いていた友美が、瞳を真ん丸にしていた。
「沙織さんっち、けっこう美人や思うとったとに、そげん男性からモテんかったとぉ? 言うたら悪いっちゃけどぉ……やっぱしそのぉ……性格的な問題けぇ?」
「んだ……言いにくいんだどもぉ……そんとおりだべぇ♐」
泰子の説明は、実は以前に聞いた話の蒸し返しでもあった。しかし、さらに付け加えている原因によると、沙織は大学でもバリバリの恋の行動派であるらしい。おまけに大学祭の実行委員長は務めるわ、体育祭の競技大会でも女性ながら応援団の団長をこなすやら。その勢いについて行けなくなった歴代の彼氏たちが、次々と沙織から離れていったと言う。 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |