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『剣遊記番外編T』

第三章 魔術師と姉妹、三人の旅立ち。

     (5)

 山賊どもをにらんだまま、千秋と千夏を自分の背後に下がらせ、美奈子は新たな呪文を唱えた。

 

「こんアホたれぇ! オレやってなぁ!」

 

 負けじと舐木野も、呪文の詠唱を開始。緊張しきった空気の中、呪文と呪文のぶつかり合いが勃発した。

 

「はあっ!」

 

「はあっ!」

 

 ついに両者が、まったく同時、両手を前方へと突き出した。さらにこれまた、ほとんど同時、ふたりの手の平から、火の玉がボワンと発射された。

 

 正面衝突必至! 双方からの火炎弾であった。

 

 舐木野が発射したメロン大の火炎弾が、美奈子目がけて一直線に宙を駆け抜ける。だが美奈子の発射した火炎弾は、舐木野が発射したモノとはケタ違い。ほぼ五倍(ジャンボカボチャ級)の直径がある、化け物のようなシロモノだったのだ。

 

「う、嘘やろぉーーっ!」

 

 そのためなんの苦もなく、空中で舐木野の火炎弾をペロリと飲み込む始末。さらに直径を倍加して、山賊一味のド真ん中へと突入した!

 

「わひぇーーっ!」

 

「危ねぇーーっ!」

 

 何人かは慌てて逃げ出したから無事だった。鱏毒と舐木野も。

 

しかし愚図愚図していた連中はチュドドドオオオオオオォォォォォォンッと、足元に落下した火炎弾の大爆発に巻き込まれてしまった。

 

「ぷっはぁ〜〜☠」

 

二十人ほどが、顔面真っ黒の頭チリチリ。口から煙を吐いてぶっ倒れた。

 

これで五分の四が壊滅。残り十人弱となったわけ。

 

「さあ、どないしまんのや? 武器を仰山集めはって、村を襲うんやなかったんどすか?」

 

とにかく立場が、完全に逆転。早くも自信満々(少々過剰気味✌)である美奈子を前に、山賊どもは皆、見事な逃げ腰となっていた。

 

つまり彼らも、ようやく認識したのだ。自分たちにとって、鬼に金棒だと思っていた舐木野の魔術が、実はてんで頼りにならないことを。

 

「こ……降参させてぇなぁ〜〜☂」

 

「ま、参ったさけぇ……☃」

 

戦意をすっかり喪失した子分どもが、親分が前で見ているのも構わず、次々に剣や刀を美奈子の足元へバラバラと投げ捨てた。

 

「お、おめえらぁ! 俺に断りのう勝手に白旗揚げるんやないでぇ!」

 

ひとりで吼える鱏毒の悪あがきも、どこか虚しい響きばかり。

 

「大変よろしい心掛けでおまんなぁ☺」

 

そんな山賊どもに、美奈子は女神のような気分で、優しく微笑みかけてやった。それから次は大声で叫んで、特大級の衝撃波を、山賊の生き残りどもに思いっきり叩きつけた。

 

「でも、寄ってたかってうちを紐でグルグル巻きにしたこと、断じて許しまへんのどすえーーっ!」

 

 ドババババアアアアァァァァァンッッと猛烈なる破壊力が、残りの十人を見事に吹っ飛ばした。

 

「ひどいーーっ!」

 

「降参したやおまへんかぁーーっ!」


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