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『剣遊記12』

第六章 サングラスが年貢を納める日。

     (9)

 熊手が操る馬車に乗っている面々は、主人である黒崎氏と秘書の勝美はもちろんのこと。おまけで孝治、裕志、友美。内緒で涼子も便乗していた。

 

 当然幽霊が乗っていようとは、孝治と友美以外には、まったく知られていない秘密である。

 

 それからなんだか、人数が足りないと思われている方々に、説明をしておこう。街道では馬車といっしょに象も並んでおり、その背中には博美と、なんと荒生田が跨っていた。ちなみに並び方は、博美が前で荒生田はうしろ。

 

 その帰りの馬車の中。孝治は黒崎に尋ねていた。自分自身の胸の中でモヤモヤとしている、根本的な疑問を片付けるために。

 

「それで店長は、ずっと前から陣原家からの依頼ば請けて、密かに調査ばしよったっちゅうわけなんですか?」

 

 これに黒崎は窓から街道の景色を眺めつつ、どうもニヤニヤとしている感じで答えてくれた。すべての件が解決済みなので、今さらなにも隠す必要はなし――と言う感じであろうか。

 

「まあ、そう言うことだがや。陣原家の次男である貴道君と連絡を取り合いながらでね。陣原家の顧問魔術師である東天の動きが以前から変だと言うことなんで、東西の政府なんかにも手を回してたんだがね」

 

 それでも孝治の腹の虫は収まらなかった。

 

「そこが問題なんよねぇ☢ 店長がそげな感じで裏で動くんは勝手なんやけど、なしておれたちにはなんの説明もなしで、いきなり派遣っちゅうことになったとやろっかってね♨」

 

「ああ、それはだなぁ」

 

 いよいよ黒崎から核心に迫る返答が聞けるとあって、孝治と友美、裕志に涼子も、身を前へと乗り出した。それから四人とも、ジッと店長の話に聞き耳を立てていた。

 

「今だから正直に話すんだが、あの東天とかいう魔術師も彼なりに利口だったから、なかなかこちらが思うとおりにしっぽを出そうとはせんかったがや。そこで僕が一計を案じ、未来亭から戦士たちを派遣して、彼に揺さぶりをかけることにしたんだがね。彼にとっては敵かもしれないところから多数の戦士が送り込まれたとあっては、さすがになにかをしないわけにはいきゃねーがや、と思ってだがや」


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