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『剣遊記12』

第六章 サングラスが年貢を納める日。

     (8)

「では、これにて失礼しますがや」

 

 最後に黒崎が一礼。熊手が馬車を出発させた。

 

「さあ、おれたちもりっかぁ(沖縄弁で『行こうか』)✈」

 

 パオーーッ

 

 出発の場ではほとんどしゃべらなかったのだが、博美もラリーの頭に跨って、象の進行をうながしていた。

 

 これら未来亭の一同に、手を振って見送る、陣原家の皆さん方。その中で貴明の大きな声が、周辺に響き渡った。

 

「孝治さぁーーん! 今度久留米にいらっしゃったときはぁ、ぜひ僕と正式にお付き合いばしてほしかですぅーーっ!」

 

 その声を聞いた孝治は、顔面に何本もの縦線が走る思いになった。

 

「うわっち! そげん言うたらおれって……陣原家の人たちにほんとんこつ、いっちょも言うてなかったっちゃ☢ おれがほんとは男やっちゅうことをやねぇ☠」


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