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『剣遊記12』

第六章 サングラスが年貢を納める日。

     (2)

「ラリー! やーを操ってた敵は死なすたけー、もうゆくるしようねー!」

 

 象のラリーがパオーーッと、今も長い鼻を振り回し続けていた。またそれを、頭に跨っている博美が一生懸命になって、彼女(何度もしつこいけど、ラリーはメス)を鎮めようとしていたのだ。

 

 ちなみに東天は、決して死んだわけではない。だけどその付近の誤報には、今は誰も突っ込もうとはしなかった。

 

 それはとにかく、肝心の象使いでさえも抑えられない状態なのである。これでは一般の人々が巨象をおとなしくさせるなど、絶対的に絶望的のはずだった。

 

 ところがここで『だった』と付け加えた理由であるが、この超危機的状況でまたもや荒生田が、自信満々の態度でしゃしゃり出たのである。

 

「ゆおーーっし! これもオレに任せんねぇ☀」

 

「先輩っ! 無茶ブリ過ぎますってぇ!」

 

 サングラス😎の先輩がもともとから無茶で無謀な性格など、孝治は元から知っていた。

 

 だがさすがにこれは、度が過ぎていた。

 

 後輩の孝治は絶叫して、先輩の大無謀をやめさせようとした。しかし荒生田は、軽くそれを受け流すだけだった。

 

「まあまあ、おまえらは静かに見ときやって☀」

 

 さらに堂々と、暴れる象の真正面に、自分の勇姿(気取り)を披露した。

 

「お、おい! やぁーーっ! 馬鹿な真似すんなぁーーっ! ラリーからくるすられ(沖縄弁で『殺され』)っぞぉ!」

 

 博美も荒生田の言わば暴挙を目の当たりにして、大きな声を張り上げた。博美は日頃から常に象を愛している半面、また象の恐ろしさも、身に沁みてわかっているのだろう。とにかく荒生田の巨大無謀過ぎる振る舞いで、彼女は瞳を大きく開いていた。

 

それでもサングラスの戦士は、いつもの軽い調子。右手を前へと差し出し、ふだんの先輩らしくない、実に優しい口調でラリーに話しかけていた。

 

「はい、どうどう、もう悪い野郎はおらんとやけ、もうおとなしゅうしてもいいっちゃけね♡」


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