『剣遊記13』 第三章 空のバカンスは嵐を呼んだ。 (8) 孝治たち(孝治のみ縄梯子)の上がった飛行船の搭乗口は、床にポッカリと丸い入り口が開いている、大きな空間だった。
そこに本日の主役である美奈子を始め、弟子の千秋と千夏。付き添い人ともいえる未来亭店長の黒崎氏を秘書の勝美。なぜか付き人になっている孝治、友美、秋恵の三人。おまけで霊外――ではない例外である幽霊の涼子。それからさらに、本当の意味での『おまけ』。未来亭給仕係の一同――由香に登志子に真岐子に、桂、朋子、彩乃などの面々が勢ぞろいをした。
早い話がメンバーの多過ぎ。これではなかなか、全員にセリフの機会が回ってこないかもしれない。
「ああ、やっと上がって来れたみたいぞなぁ〜〜☀」
開口一番、桂が口を開いた。あまり意味のないセリフだけれど。
「店長……うーか披露の割にはばってん、こん部屋、出迎えがいっちょんありませんばい?」
秘書の勝美も室内を飛び回りながら、対応の悪さに文句を並べていた。
「おれはどげんでもよかっちゃよ☠ とにかくここまで上がられてやねぇ☢」
ひとりだけ苦労を押し付けられた格好である孝治は、床に腰を落として荒い息を繰り返していた。
「友美ぃ、疲労回復の術ば頼むっちゃ⛐」
「うん⛄」
けっきょく友美に助けてもらっている最中だった。部屋の船首側にある扉が左右にガァ〜〜っと急に開いて、そこから十人ほどの、今度こそ出迎えの人たちが現われた。
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