前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記13』

第三章 空のバカンスは嵐を呼んだ。

     (6)

「よっこらせっと☠」

 

 成り行きで登ってみると、やはり縄梯子は足元が、予想以上にゆらゆらと不安定だった。

 

「なしておれが今んなって、こげな修行せんといけんとや?」

 

 孝治の頭は疑問で満載中。だけどこの問いに答えてくれる者は、現在ただひとり。

 

『そげん言うたかて、よう考えてみたらきょうのお見合いの参加者っち、男手は店長と元男っち言いよう孝治だけみたいっちゃよ♐ 他は美奈子さんに友美ちゃんとか、由香ちゃんたちの飛び入り参加も含めて、全員女ん子ばっかしやけねぇ♀♂ あっと、あたしもやけどね♥』

 

 現在縄梯子踏破中である孝治の右横で、涼子がプカプカと宙に浮いていた。

 

「涼子はよかったいねぇ♨ 上ば昇るんに、なんの苦労も要らんとやけ♝」

 

 孝治は腹立ちまぎれで愚痴をつぶやくのだが、肝心の涼子は下のほうに顔を向けていた。

 

『なんの苦労も要らんのは、あたしだけやなかみたいばい☟ みんな楽ぅ〜〜に上がって来ようけ☝』

 

「うわっち?」

 

 涼子に言われ、縄梯子の途中で、孝治は下を見下ろしてみた。足場の悪い所で下を見るのは、あまり心臓に良くない所業なのだが。

 

「うわっち!」

 

「やっほぉーーっ♡ 孝治くぅーーん♡」

 

 見ればなんと、黒崎店長を始め給仕係たちの面々が、自動上昇のように、ふつうに立っているままだった。つまりが地上から飛行船まで、浮上の最中でいるのだ。

 

 その数総勢、五名。美奈子も同じ位置にて浮上をしているので、彼女が空中浮遊の術で、五人を上まで舞い上がらせているようだ。

 

 ちなみに先ほど孝治に黄色い声をかけた者は、給仕係の登志子。魔術にちゃっかり便乗して、今やいい気なものでいた。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system