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『剣遊記\』

第七章 そして海は静かになった。

     (8)

 孝治たちは鬼ヶ島から元の出発地点――香川県の高松港に帰り着いた。

 

 孝治たちを港まで送った者は、もちろん最初からずっと一同の世話をしてくれた老漁夫である。

 

「ご老人、いろいろすまんかったのぉ☀ 残念やけど、今はこの貢献に見合うだけの礼金の用意が無いとやが、近いうちに再びここば訪れて、必ず全額払うことば約束するけね☝」

 

 高松港の岸壁に降り立つなり、帆柱が前足の馬脚を折り曲げて、老漁夫に深々と一礼した。老漁夫はこれを受け、即座に笑い始めた。

 

「なんな、そんなのまんで気にせんでええわい♥ わしかて海賊がようおらんようなって、これきん安心して漁ができるんやから、むしろ礼を言うんはこちらじゃきに♥ うははははははっ♥」

 

 真にもって豪快な、海の男らしい大笑いであった。

 

「やけん、やっぱそげんゆうわけには……♋」

 

 ここであくまでも、帆柱は礼金にこだわった。これに老漁夫は、今度は自分の船に振り返り、そのまま目を向けたままで、帆柱に返事を戻した。

 

「まあ、そこまで言うんやったら、わしゃいつでもこの港におるんじゃきに、いつでも訪ねて来るとええ⛴」

 

 それを聞き、帆柱もやっと、安心の顔になった。

 

「そげんですか✐ では、ご老人、礼金が用意できしだい、また訪ねることにしますけん✈ そん日までお達者で⛅」

 

「じいさん、元気でいてや✋」

 

「おじいちゃん、さよならぁ♡」

 

 帆柱と孝治と友美が代表で別れの挨拶を行ない、一行は北九州への帰路に着いた。


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