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『剣遊記\』

第七章 そして海は静かになった。

     (5)

 とにかくこうして、海岸に全員が集合。あとからのこのこと、美奈子と千秋・千夏姉妹も顔を出してきた。

 

 ただし美奈子たちには、おまけがたくさん付いていた。なんと人質にされていた船員たちもいっしょに、ぞろぞろと洞窟の中から湧き出てきたのだ。

 

「こ、こん人たちって……みんな海賊に捕まっとったっちゅう人たちなんけ?」

 

「そう言うことや☆ 師匠と千秋と千夏の三人で助けてやったんやで✌」

 

 その人数のあまりの多さ(約二百人)に、友美がビックリ顔をした。ところが友美に応える千秋の態度ときたら、鼻の下を右手人差し指でこすって、さも自慢そうに答えてくれる小憎らしぶり。だけどちょっぴり、様子が変だった。

 

「千夏……ちゃん、ちょっと太っちょらせんね?」

 

 孝治も右手人差し指を向けて、指摘をしてやった。洋服のおなかの部分が、なぜかパンパンにふくらんでいる、妹の千夏を指して。

 

 すぐに千夏は孝治から目線をそらし、いつもの彼女らしくない、少々の引きつり笑顔で応じてくれた。

 

「そ、それはなんですねぇ……♥」

 

 このとき初めて孝治は拝見をしたのだが、千夏の額には汗😅が流れていた。こんな風に、なぜか困っている感じの千夏を見るのは、誰もがきょうが初めての出来事であった。

 

 それから千夏が、懸命の言い訳を展開。

 

「あのねぇあのねぇ、千夏ちゃんはぁ、人助けしちゃうとぉ、太っちゃう体質なんですうぅぅぅ♡」

 

「嘘吐け☠」

 

 ひと言で一蹴。孝治はそんな千夏の両足を両手で持ってつかみ上げ、逆様にして上下に振った。

 

すると、案の定だった。ジャラジャラッバラバラッと、千夏が着ている服の中やポケットから、金貨や宝石が何十個も落ちて散らばった。

 

「これはなんねぇ!」

 

 孝治は怒鳴った。それでも千夏は『おとぼけ』をやめなかった。

 

「あれぇ? 変さんですうぅぅぅ? いつの間にぃ、お金さんとダイヤさんがぁ千夏ちゃんのぉおなかに隠れんぼさんしたんでしょうですうぅぅぅ?」

 

「バカチン抜かすんもたいがいに……うわっち?」

 

 再度怒鳴りかけた孝治の瞳に、今度は美奈子の黒衣が写った。なぜなら美奈子が着ている黒衣も全体的に見て、やはりプックラとふくれ気味にあったからだ。

 

 その美奈子が珍しくも、ポッと顔を赤らめた。

 

「こ、これはぁ……うちも人助けをしたらやなぁ……そのぉ……妊娠する体質なんでおますんや……☁☂☃」

 

 孝治は突っ込んだ。

 

「産まれる子供は金銀財宝けぇ!」

 

「わかりもうした……うちの負けでおます☢」

 

 孝治に詰め寄られ、あっさりと観念したようだ。美奈子が黒衣のヒモを緩め、中に収めていた物をドサドサドサッと吐き出した。

 

 黒衣の中には千夏以上に宝物が詰め込まれていた。

 

「……ったくもう、最初に言うたっちゃろうが✍ 宝は一応衛兵隊に提出⛑ 半年後に持ち主が出らんかった分だけ、こちらが受け取ってもよかっちね⚠♐」

 

 美奈子と千夏が足元に落とした宝石類や金貨などを、孝治は愚痴愚痴とつぶやきながら拾い集めた。そのうしろでは、千秋がこれまたぶつぶつとつぶやいていた。

 

「今回もやっぱ、骨折り損のくたびれ儲けやったなぁ⛐ 師匠と千秋らの冒険は、まだまだこれからやっちゅうことやな⚤」


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