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『剣遊記\』

第七章 そして海は静かになった。

     (12)

 このとき、美奈子たちの会話など聞こえるはずのない場所にいる孝治の背中を、なにかゾクッとするような、冷たい何者かが直滑降で這いずっていた。

 

「うわっち!」

 

「どげんしたや? 孝治」

 

 いきなりビクついた後輩に、甲板から瀬戸内海の風景を眺めていた先輩の帆柱が、こちらに振り向いて尋ねてくれた。

 

 孝治は嫌な予感を感じつつも、軽い返事で先輩に応じた。

 

「いえ……ちょっと寒気ば感じたもんですから……なんか背中ば、ニョロニョロしたもんが通ったような感じがしたもんですけ……ははっ☠☢☠☃」


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