『剣遊記 番外編Y』 第二章 新怪人続々登場。 (7) 「あっ、そうやった☆ まだ徹哉くんがおったんばいねぇ☜」
声をかけられて我に戻った――と、大袈裟に言うほどでもなかった。だけど存在そのものを、いつの間にやら律子も秋恵も忘れていた。
徹哉があれからほとんど、ひと言も発していないばかりに。
「まあ、孝治くんに代わって、今度はわたしが徹哉くんとお付き合いってわけばいね☻ そやかて徹哉くんってほんなこつ、見た目パッとせんばいねぇ〜〜⛍⛇」
などと身もフタもないつぶやきを発しながら、律子は改めて、店長から新たなお荷物を背負わされていることを再認識した。
だからと言って、今さら責任放棄もできないだろう。
「よかばい⛑ あした朝御飯ば食べたら、修行するとに手頃な遺跡が、けっこう近い所にあるけん、秋恵ちゃんば連れていっしょに行くとこやったと✈ やけん徹哉くんもいっしょに来んね?」
「ハイ、ワカッタンダナ。コノ際近イトコデモイインダナ」
しかし自分から同行を求めたくせに、徹哉の返事は感謝の色が、とても薄い感じでいた。これに一応の覚悟はしていたものの、律子にとっては、やはりの幻滅ものだった。
「……こげなんやったら、孝治くんが徹哉くんのことば、あんましええ印象で言わんはずばいねぇ〜〜⛹」
内心でため息を吐きつつ、律子は後輩のほうにも目を配ってみた。ところがこちらは、律子よりは、かなり前向きな対応の仕方。
「そがんやったら三人でっちゅうことですね⛵ やっぱし男ん人がついてきてくれるとでしたら、うったちゃいじくそ心強かですよ♪」
先ほどまでの疑念もどこへやら。突然に等しい仲間入り志願の新人――言わば同胞の登場で、喜びの色満開になっていた。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |