前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記 番外編Y』

第二章 新怪人続々登場。

     (6)

 あとに残った者たちは当たり前ながら、律子と秋恵。それとなにを考えているのかまったくわからない、ポーカーフェイス😑の徹哉だけ。

 

「行っちゃったばいねぇ……先輩⛐」

 

 しばしの時間が経過をしてから、秋恵がポツリと口を開いた。

 

「ええ……そうみたい☠」

 

 やり場のない興奮が、今もって冷めないまま。それでもふっとため息を吐きながらで、律子もポツリと応じ返した。

 

 秋恵は律子の頭に、琥珀色の瞳を向けていた。

 

「先輩……頭に薔薇ん花ば、まだ咲いとうとですよ☝」

 

「あら……ほんなこつ☋」

 

 店内にある大鏡で自分を見れば、そこは後輩からのご指摘どおり。律子の緑の髪の到る所に、赤や黄色の薔薇の花が、なぜかいまだに満開の状態となっていた。最近では興奮の度合いに合わせて、いつの間にか薔薇が持続するように進化(?)をしているようだ。

 

「まあ、ただのアクセサリーばい☺ 気にせんでよかよ☘」

 

 律子はそのように秋恵と自分自身をごまかして、食後のコーヒーを改めてご賞味。すべては今も頭に花を咲かせたままでいるほどの、自分の気を落ち着かせるためである。ただしコーヒーがかなり冷めているので、落ち着かせ効果には疑問符が付くのだけど。

 

「おしゃっぱ(長崎弁で『お節介』)とは思うとですが、先輩☎」

 

 それでも律子も、なんとかふつうの気分に戻った(?)ところ――だった。そこへ秋恵が、新たに感じたらしい疑問について、ポツリと尋ねてくれた。

 

「店長が『こん世界』『こん世界』ってなんべんも繰り返し言いよりましたけど、これってどがん意味なんでしょうかねぇ? 『こん世界』って、あたしらの世界やろーもん、って思うとですけどぉ……☁ やぐらしか(長崎弁で『うっとうしい』)けど、あの日明ってひっちゃかめっちゃかん人も、なんかこん世界の人やないばし聞こえるとですよねぇ……✄」

 

「なん馬鹿んこつ言いよっとね⛑」

 

 律子はそんな後輩の疑問を一笑してやった。

 

「『こん世界』っち、世界はこの世にひとつしかなかとよ⚠ いったいどこに、別ん世界があるっちゅうとね⛔」

 

「そ、そがんもんなんですかねぇ……☁」

 

 しかしあっさりと否定をされたところで、簡単に納得をしてくれる秋恵ではなかった。ただ先輩と、これ以上の押し問答を続ける気概も、同時に無いようだった。

 

「……そ、そがんですよねぇ⚐⚑ 別ん世界なんち、あるはずなかですよねぇ⛅⛖」

 

 ここは一応律子の顔を立て、話をこれにて打ち切りにしてくれた。

 

 ところがここで、打ち切っていない者が、約一名存在していた。

 

「デ、デ、デ、デハ律子サンニ秋恵サン、ボクヲ勉強ニ連レテッテホシインダナ」


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system