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『剣遊記]』

第六章 新人類の誕生。

     (21)

「どげんや♡ 悪ば裁く、このオレの正義の剣♡ なかなかのモンやろうが♡」

 

 中央広場からやや離れた建物の陰。有混事一党の惨憺たる有様を遠目にして、荒生田が自慢たらたらで鼻を高くしていた。

 

 九州に帰る準備を整えた孝治たち一行。出発を前にもう一度、有混事たちの様子を見るため、広場近くまで寄り道をしていた。

 

 もちろん彼らを石像に縛った張本人は、孝治たちであった。一行は蟻連と有混事を倒したついで。黒幕であった行政長官(お終いまで名無し)も成敗。そのあと彼らをわざわざ広場まで運んで、武神像の上で晒し者の刑に吊るし上げたのだ。

 

 有混事は『命だけはお助け😭』と言った。だから孝治たちも、その願いを聞き入れてやった。

 

 その代償は、死ぬほどきつい赤っ恥と、やがておっとり刀で駆けつけるであろう、衛兵隊による拘禁なのだ。

 

 現に野次馬で群がる市民たちの間から、長官と伯爵、司教たちに向け、激しい罵声と野次が浴びせられていた。

 

「見てみい! こん前までよそモンのくせして妙に威張っとった連中が、頭まん丸になって縛られとるでぇ☠」

 

「なんがあったかようわからんのじゃが、こいつらこげーちゃーけたことしとったんじゃのぉ☠」

 

 などなど。

 

「どうずら? 危うくちっとべえ忘れるとこだったども、あたしがお終しめえになって思い出した桐都下っての、囮の役目さ充分に果たしてくれたんだにぃ♡」

 

 広場前から立ち去る直前、可奈までが始めてくれた自慢話に、孝治は大きなうなずきで応じてやった。

 

「そうっちゃね♥ でも、もしあのまんま忘れちょったら、桐都下って野郎、永久に紙にされたまんまやったんやなか☠?」

 

「う〜ん☠ それは言えそうだにぃ☠」

 

 孝治の疑問を否定せずに認めるところが、可奈の怖い性格だと言えそうだ。

 

「確かに他に使い道がなかったら、いつかはクシャクシャにごったくして、ゴミ箱にポイッやったずらぁ♡ それさ考えたらあいつ、案外幸運やったずらねぇ♡」

 

「他人事みてえに言うもんやなかばい☠」

 

 背中に大きな戦慄を走らせる、可奈の恐ろしくて無邪気なセリフであった。だけどそれに応じる孝治も、実は桐都下に対する同情心は、極めて希薄な感じでいた。なぜなら桐都下も、率先して律子を苦しめ続けた野郎どもの一員なのだから。


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