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『剣遊記]』

第六章 新人類の誕生。

     (19)

「な、何モンじゃあ!」

 

 長官が馬に跨ったまま。また三人の付き人も、同時に剣を抜いて身構えた。そこへ月に照らされた夜道の先から、ひとりの男が湧いて出た。

 

 右手に角燈{ランタン}を持っている付き人Aが、その男の姿を闇から照らし出した。革の鎧を着ている外観からして、そいつはどうやら戦士のようだ。ただ、今が夜中なのにも関わらず、わざわざ視界を暗くするような黒いサングラスをかけているところが、なんだかとても変だと言えた。

 

「貴様ぁ、何モンじゃあ! この界隈では見かけん顔のようじゃが……?」

 

 姿さえ見えたら、あとはそれほど恐れる必要はなし。長官は剣を構え直し、角燈に照らされているサングラスの戦士をギロリとにらみつけた。

 

 すると、その行動に、呼応するかのごとくだった。なにかに怯えきっている様子の桐都下が、急に大きな声で叫んだ。

 

「ちょ、長官殿ぉ! 気ぃつけてくだせえ! そいつに伯爵と司教がやられたとですぅ!」

 

「な、なんじゃとぉ!?」

 

 しかし桐都下の叫びによる忠告は、ここではかえって裏目となった。その理由はこの声に驚いて、長官と付き人三人に、一瞬の隙が生じたからだ。その隙を、黒いサングラスの戦士――荒生田は見逃さなかった。

 

「正解っ♡ こんオレがてめえの仲間ば片付けてやったと♪」

 

 相手が馬上にいようとも構わず、荒生田が鞘付きの剣で、瞬時にバッと斬りかかった。

 

「ぐええっ!」

 

「ぎゃぐぅっ!」

 

「ごどわぁっ!」

 

「ぎゅべげぇっ!」

 

 目にも留まらぬ早業とは、まさにこの瞬間。荒生田の剣が長官を始めとする四人の胴を、一挙に強打しまくった。このため長官は、瞬く間に落馬の有様。三人の付き人も、やはり地に伏した。長官を含む四人とも、まったく名前も紹介されないままで。

 

 これにて残った四頭の馬たちが主人を捨て、そのまま何処へパカパカと走り去った。

 

「ひ、ひえ〜〜っ! や、やっぱあんたは化けモンばぁ〜〜い!」

 

 荒生田はこの場でひとり、腰を抜かしている桐都下にも容赦をしなかった。

 

「『化けモン』とは失礼っちゃねぇ☠ オレみてえなイケメンばつかまえてくさ♨ まあ、ええたい☀ とにかくご苦労♥ 二次元の紙ん中から元に戻ってもろうたっちゃけど、君の役目は終わったっちゃね♥」

 

 荒生田はやはり鞘付きの剣で、腰が抜けて尻もち状態でいる桐都下の脳天を、ゴツンッと一撃。あえなく昏倒させてやった。


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