『剣遊記 番外編W』 第二章 只今、島流し中。 (6) 『世話係』と教官は言ってくれたのだが、その実態は『付き人』そのもの。それこそまさに、言われたとおり。朝から晩まで自分に付き従ってばかりいる徳力に、清美はある種の鬱陶しさすら感じ始めていた。
「ぬしゃ、ほんなこつ『馬鹿』ん字が付くほどの、なばんごて正直野郎なんばいねぇ☠」
「は、はい……☁」
本日も学校の廊下にて、自分のうしろについてくる徳力を見下しの瞳で見つめながら、清美は悪態をつきまくっていた。
実際、教官の思惑どおりかもしれなかった。清美は校内でなんらの問題行動も起こしてはおらず(ある意味起こせない)、封じ込めは見事に成功したと言えるのかも。
「こぎゃん見えたかてあたいは、前の戦士学校で腹かくようなおっこいつく(熊本弁で『ふざけた』)先輩ば、徹底的におろいか(熊本弁で『ボロに』)してやったんばい☠ まあ、そんせいで退学になっちまったとばってんけど☻ まあ、そいつがなんば勘違いしとったんか知らんとばってん、妙に親分気取りばしてくさぁ、あっちゃこっちゃで悪さばしよったとばってん、またそいつん親が貴族の名士やったもんやけ、けっきょく悪かっちゅうのはいっちょんあたいってことになっちまったもんやけねぇ☻♨」
「へぇ〜〜、そぎゃんなこともあったとですけぇ☛」
あまりにもつまらない日々が続くので、つい口から出た、清美の昔話であった。だけどこれに対する徳力の受け答え方が、これまた平凡極まるものでいた。
「じゃ、じゃあ、今度のこん学校では、問題ば起こさんようしてくださいね♋ なんかボクまで、いっちょんいかん目に遭いそうやけん☃」
「ぬしゃほんなこつ、うっちゃとれん(熊本弁で『構ってやれん』)野郎たいねぇ……はぁ……☠」
これ以上世話係――徳力と話しても、一向に埒が明かない。清美は半分あきらめの境地になって、深いため息を思いっきりに吐いた。
そんなふたりの間に割って入る、複数の声あり。
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