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『剣遊記 番外編W』

第二章 只今、島流し中。

     (10)

 その日以来だった。徳力は清美に付き従う態度をますます徹底させ、今や身の回りの世話一切を、自分から進んで受け持つようになっていた。

 

 また、その反作用なのだろうか。逆に雨留守たちから雑用を言いつけられる場合が、まったくと言ってよいほどになくなってもいた。しかしこれは、彼らが便利屋を女猛者である清美にゆずり渡しただけ――とも言えそうな結果なので、けっきょく徳力の立場自体は、そう変化したものでもなかった。

 

 だけどそれでも、徳力は満足なる日々を送っていた。

 

 これはなんとも形容しがたい話だが、同じ『従う』であっても今までの雨留守たちからはまるで感じなかった充実感を、徳力は清美から享受できるようなのだ。

 

 早い話。使用人根性に、ますますの磨きがかかっただけかもしれなかった。

 

 とにかくその後は、ふたりとも特に問題行動はなし。戦士学校を無難に卒業した。

 

 これについて同級生たちは、暴走しがちだった清美を徳力が、上手に制御していたからだと噂し合っていた。また例の教官などは、意味深な笑みを浮かべるばかりでもあった。

 

「ふふっ☀ やはり私の狙いどおりやったばいねぇ☻ これで私も、優雅な年金暮らしができるっちゅうもんたい☺♡」

 

 このような経緯で、社会人となった清美と徳力は、卒業してもコンビを組んだまま。さらにそろって門を叩いた所。故郷の熊本を離れ、北部の北九州市で最も戦士を雇ってくれやすいと評判の、未来亭であった。

 

 理由は高が仕事探し程度で、チマチマと悩みとうなか。簡単に職さえ決まれば、それで大いにけっこうたい☆ これこそが清美の面倒臭がりそのものと言える選択肢なのだ。

 

 でもって話は、これからまた数年後へと戻るわけ。


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