『剣遊記Y』 第三章 精霊抗争勃発! (20) 「なんねあれってぇ! けっきょく失敗っちゅうことやない!」
「ぼくに言われたかて、困るっちゃけどぉ……☁」
一部始終を見ていた由香が、歯噛みをしてくやしがる。しかし反対に裕志のほうは、ほっと安堵の息を吐いていた。
由香の頼み(実態は命令そのもの)で、宿敵泰子を陥れるための罠を張ったものの、やはり女の子をいじめる行為は、裕志の性分からいって寝ざめの悪いものだった。だから孝治には気の毒であるが、とりあえずは一難が去った心境に、今の裕志はなっていた。
「と、とにかく、これでもう終わりっちゃけね☺」
裕志としてはこれ以上、妙なケンカに加担をしたくはなかった。そこでなんとかあきらめてくれるよう由香に願うのだが、やはり聞き入れてはくれなかった。
「いんや、作戦はまだまだこれからやけね!」
由香は裕志の予想以上に、執念深い性格だったのだ。
「あ、そう……♋☹」
裕志は深い深ぁ〜いため息を吐いた。 (C)2012 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |