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『剣遊記Y』

第三章 精霊抗争勃発!

     (2)

「ねえ、もしかして、あがんずんねぇ建物がそうっぺぇ?」

 

 ハーピーの浩子が飛行しながら右足のかぎ爪で指し示した先には、居並ぶ周辺の建物を見下ろすような四階建ての木造建造物がそびえていた。足で指す行為は行儀が良くない感じもするが、浩子は両手が翼になっている体型上、それも仕方がないのかも。

 

「そうみたい♡ 市内で一番大きくて目立つ建物だって言ってたからぁ!」

 

 沙織にもすでに、未来亭の大きな構えが瞳に入っていた。

 

「泰子ぉ! あの建物の裏にある中庭に着地してぇ! 健二兄さんから、そんな風に言われてるからぁ!」

 

 いったい泰子とは、誰を指して言っているのか。とにかく沙織が指示したとおり、『空飛ぶ絨毯』がくるりと進行方向を転換。中庭に向けて、緩やかな降下を開始した。

 

「さてと、なにが私を待ってくれてるかしら……ってね♡」

 

 自分たちを迎えてくれるであろう、未知の職場に対する期待感。それと、まるで血の気が引いていくような急降下感が重なって、沙織の胸は、自然と鼓動を高めていた。


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