『剣遊記Y』 第三章 精霊抗争勃発! (18) 「ほぉーーっほほほほほっ! やっぱシルフも大したことなかっちゃわよねぇ! こげな基本的な仕事のひとつもやおいかんのやけねぇ☠☠☠」
つい心で思い描いた光景を、由香は歓喜もあらわに口走っていた。そんな由香の右隣りでは、裕志がすっかり青ざめの顔。
「……やっぱ、やめたほうがいいっち思うっちゃよぉ……こげなことほんなこつ、由香らしゅうないけ……☁☁」
もちろん今の由香に、彼氏の哀願など、耳を傾ける気はさらさらなかった。
「駄目っちゃけ! 他の誰ならともかく、シルフにバリ馬鹿んされたことだけは、あたし絶対我慢ができんと! 水と風とは精霊族創世以来の因縁があるっちゃけね!」
「ふう……☹☹」
けっきょく由香に、やり込められた格好。裕志が『しょうがなかっちゃねぇ〜〜☁』のため息を吐く。
実際由香からせがまれて、魔術で見えないクモの糸を張った者は、当の裕志であった。だけど今になって、小心者ゆえの罪悪感が、胸にひしひしとうずいていた。さらにすべてが終了したあと、泰子になんと言って謝るべきかを考えると、胃袋までがキリキリと痛んでくる。
「しっ! いよいよ獲物が罠にかかるっちゃよ♐ むげねぇ(筑豊弁で『可哀想』)小ウサギの末路ば、よう見ておかんとね☠」
「魔術ばこげなことに使いたくなかっちゃけどねぇ……☃」
このような悪のふたり組が注視する前だった。泰子が糸の地点に差しかかろうとしていた。
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