『剣遊記Y』 第三章 精霊抗争勃発! (14) それからなんとかして、裕志の誤解を解くための説得には、孝治は一応成功した(って、どうやって?)。しかし精神的衝撃(?)からいまだ立ち直れない孝治は、そのまま自分の部屋に閉じこもってしまった。
俗にいう『引きこもり』。
反対に、このままでは絶対に引き下がらない者がいた。現在までのところ、やられっぱなしの由香であった。
「ええーーっ! 仕返しすっとぉーーっ!」
「そうっちゃ☠」
由香は裕志を中庭まで引っ張り出し、なにやら良からぬ企てを進行させていた。
「このまま負けたまんまやったら、全国二百万人のウンディーネの同志に顔向けできんけね☠」
「ウンディーネって、日本にそげんおったと?」
「それはどげんでもよか!」
自分で言っておいて、あっさりと黙殺。
「それよかなんとしてでも、あの小生意気な秋田風{かぜ}女ば、ギャフンっち言わせんといけんのやけ☢ これには精霊の意地がかかっとんやけね♨」
由香の執念深そうなセリフを聞いて、裕志は顔面からすぅ〜〜っと、血の気が引いていく思いがした。
「やけんって、制服ばボロボロに破いたりっとか、靴に画鋲ば入れたりなんち、陰湿なこつしたらいけんばい……☁」
「あっ! そん作戦ばええっちゃねぇ♡」
「ちょ、ちょい待ちんしゃい!」
裕志は慌てて、頭を横に振った。実際今の由香であれば、本当にそれをやりかねない。
「そ、そげんことよかぁ……泰子さんとは仲直りばしたほうが……☁」
「行くっちゃよ!」
「はい……☃」
なんとか復讐を思い留まらせようとする裕志の忠告など、てんで聞く耳なし。由香が強引に彼氏の右手を引っ張って、修羅場――ではない仕事場へ向かった。
こんなふたりをこっそりと空中から見張っていた者が、またもや涼子だった。この幽霊は例によって、今回も高見の見物を決め込む性悪ぶりを、最大限発揮するつもりでいるようだ。
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