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『剣遊記13』

第四章 響灘上空三十秒!

     (9)

「ボス、逆らう野郎は、今んとこ出てこんようですねぇ☻」

 

 飛行船内に侵入した賊どもの数、およそ三十人。しかし非武装の船(飛行船)を襲撃する作戦であれば、人数はこれでも充分以上と言えるだろう。

 

 今、長身で金髪モヒカン頭のボス――フライング・コンドルのリーダー――桐米良{きりめら}を中心とする集団が、無人の地を蹂躙するかのごとくだった。銀星号船内でのドスドス闊歩を強行していた。

 

 しかも空中を戦場にする賊らしく、彼らが手にしている武器は、軽量な短刀や小型の剣がほとんどであった。

 

 だがそれとても、民間人を襲う武器としては、上等以上のシロモノなのだ。

 

「当ったり前やろうが☠ わいらの名(フライング・コンドル)もけっこう世の中に知られたんやさかい、パンピー(一般ピープル)どもがビビッて出てこんようなるんも、当然の結果なんやでぇ☀」

 

 海賊行為も楽に片を付ければ、それはそれで越したことはなし。ボスの桐米良は楽観気分丸出しで、船内の通路をあちこち物色しながら、部下どもといっしょに前進を続けた。

 

 当然の展開ながら彼らの前に、まずは黒衣の魔術師が登場した。

 

「お待ちなはれや! これ以上の乱暴狼藉の数々、天が許しはってもこのうちが堪忍できまへんのやでぇ!」

 

「おっ☆ やっと抵抗勢力が出たっちゅうもんやなぁ☻」

 

 桐米良を始めコンドルの面々全員が、いきなり登場した黒衣の魔術師――それも女性を、ハナッから舐めてかかった。

 

「ボス、やっちゃいましょうかねぇ?」

 

 桐米良の右に立つ子分Aが、舌舐めずりをして、ボスに尋ねた。

 

「なんでもボスが一番なんやさかい、たまにはわいにもうまいことさせてもろうてもええっちゅうもんでんがなぁ✌」

 

「まあ、たまにはええかもな✋✊

 

「よっしゃあーーっ!☆」

 

 子分Aにとっては幸いにも、きょうの桐米良は、気分も幸先の上々だった。とにかくボス(桐米良)の承諾(?)を得た子分Aが、早速黒衣の女魔術師に飛びかかった。

 

「うっへぇーーっ♡ 最高の上玉やでぇーーっ☀☆」

 

 相手を完全に舐めまくっているので、もはや両手は手ぶらの状態。武器もなにも無かった。

 

「いちびるんやおまへんでぇ!」

 

 ところが女魔術師もこのときを見計らったようにして、右手を上下に激しく振った。とたんに子分Aの体が、後方十メートルの先まで飛ばされた。


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