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『剣遊記13』

第四章 響灘上空三十秒!

     (10)

「ぎゃん!」

 

 子分Aが後方の壁に、背中全体でドカンと激突した。

 

「ちっ、衝撃波かいな☢」

 

 とたんに桐米良の顔から、相手を舐めてかかっている色が消えた。それどころか逆に、自分をパッとチェンジもさせてみた。女魔術師を警戒する体勢に。

 

 これは飛ばされた子分A以外の、その他の子分たちも同様だった。

 

「てめえらっ! いったんこの女から離れやぁーーっ! こいつけっこう魔術の手練れみたいやぁ!」

 

「へいっ!」

 

 桐米良の号令で、その他の子分どもが一斉に、女魔術師――美奈子から飛び離れて距離を置いた。

 

 美奈子は不敵な笑みを浮かべてやった。

 

「ほほほっ☠ まずはひとりをけしかけて実験台にし、相手の実力を探りはる……悪党がよう使いはる悪知恵でおまんなぁ☻☻」

 

「それがなんや悪いんかい!」

 

 桐米良が美奈子に吠え立てた。

 

「野郎ども! こないな魔術師がおったら、どうも分が悪いみたいや☠ ここはさっさと退却するんやぁ!」

 

「おやまあ?」

 

 桐米良のあっさりとした撤退宣言は、逆に美奈子を拍子抜けさせた。

 

「なんて呆気ないお人たちでおまんのやろ?」

 

「やかぁーーしぃーーっ!」

 

 ポカンとする美奈子に対し、当の桐米良が、親切にも答えてくれた。

 

「わいらは空の海賊やねん! そやさかい白兵戦はあんまし得意やないんやぁ!」

 

「なんとまあ、馬鹿が付くほど正直な悪モンはんやなぁ☢」

 

 このときになって美奈子の背後に隠れていた千秋がひょっこりと顔を出して、言いたいことを言ってやった。もちろん千夏もいっしょにいた。

 

「あのおじちゃん、弱虫さんですうぅぅぅ☀」

 

 いまだ両腕にヨーゼフをかかえたまんまで。

 

 さらについでだけど、孝治もドタバタと走ってきた。

 

「ふ、ふらいどちき……やなか! フライング・コンドルはどこおるとやぁーーっ!」


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