『剣遊記13』 第四章 響灘上空三十秒! (4) 爆竹の破裂音を聞いたのか、黒崎と勝美、さらに(ようやくと言うか)執事の星和までが、展望室にバタバタと駆けつけてきた。
「店長、あれって……♋」
「ほほう、話に聞く『フライング・コンドル』だがや。ついに九州の空まで進出したようだがね」
かなりビックリ気味である勝美とは対照的。黒崎は腹が立つほどに落ち着き払っていた。そんな店長とは、これまた対照的。始めっからこの場にいる由香や登志子や桂たちのほうは、最初の驚きから、どうやら落ち着いた感じ。今やどこか呑気風にはしゃいでいた。
「人間って、努力ばすればけっこう空かて飛べるようになるもんやねぇ☻」
「腹減ってるときはよかやろうけど、腹いっぱいんときでも飛べるとやろっか?✐」
「あたしもそんな現場、がいに見てみたくなったぞなぁ✍」
頼りになる店長が登場してくれたので、彼女たちも気持ちに余裕ができたのだろうか。ここで真岐子の、長いレポーターが始まったりもする。
「ああっ! なんちゅうことやろっか! あれこそ噂に名高い天空の悪魔、フライング・コンドル一味の登場ばいね☆ まさに巨大飛行船金星号の運命やいかに✊ わたしが仕入れた情報によればやけど、あのえずかハゲ頭にインディアンみたいなセットばしとうおいしゃんこそ、どうやらやつらの親分みたいばいねぇ☞ まさに空の非道! あいつらに捕まったらわたしらみんなおせこせ(筑後弁で『あれこれ』)されて、見事操{みさお}がのうなるとばい! ほんなこつえずかぁ☠ こげなばさらか困ったこつ、誰かなんとかしてくれんねrぇ!」
「あんたがいっちゃんえずかと♨☛」
孝治は横から真岐子に突っ込んでやった。無論効き目ゼロなど、初めから百も承知のうえである。
だが状況は、まさに呑気な実況に浸っている場合では、絶対になし。見ればゴマ粒のようだったモヒカンの配下どもが、一斉にハンググライダーの翼の先端を、この飛行船――銀星号へと向けていた。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |