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『剣遊記13』

第四章 響灘上空三十秒!

     (31)

「わわあーーっ! こっちゃ来るんやないでぇーーっ!」

 

 遠くながら状況の一部始終を、ずっと眺めていたに違いない。ボスの桐米良が、甲高い悲鳴を上げた。他の子分の面々も同様だった。

 

「わひぇーーっ!」

 

「ば、化けモンやあーーっ!」

 

 これも当たり前である。ほとんど無防備に等しい空中に身を置いて、目の前から巨大なトルネードが迫ってきているのだ。これでパニックにならずして、それでも人間と言えようか。

 

「に、逃げやあーーっ!」

 

 とりあえずふつう過ぎる内容の大声を上げ、桐米良を筆頭にコンドルの面々、一斉にハンググライダーの翼を翻した。

 

 一般的にほとんど風任せであるハンググライダーの翼を、このように本当に自在に操れる腕である。従って彼らの空の覇者ぶりは、まさに本物であると言えるだろう。これは充分な自慢に値{あたい}する力量と言える。

 

 ただ、今がトルネードから追われている緊急事態でなければ、それらが大いに自賛できるであろうの話。もはや腕自慢どころではなく、コンドルの面々は大慌てになって、我先に遠方へ逃れようとした。

 

 だがやはり、空の天才も空の天災には勝てなかった。

 

「わひぃーーっ!」

 

「あぎぃーーっ!」

 

 空の海賊――フライング・コンドルの面々が次々と、巨大トルネードの餌食となっていった。


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