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『剣遊記13』

第四章 響灘上空三十秒!

     (30)

 まさに空の牙、黒いトルネード!

 

「す、凄かぁ……♋」

 

 もはや孝治は口をポカンと開け、事態の急展開を、ボンヤリと眺めるしかなかった。

 

 その黒いトルネードは天の雲から海上まで、まっすぐ一直線――いや訂正。グネグネと回転しながら、蛇のような蛇行の繰り返し。海水をクリーナーのように、宙へと吸い上げていた。

 

「これっち全部、美奈子さんが魔術でやらかしとうことなんやねぇ♋」

 

 同業の魔術師としての好奇心であろう。友美がユニットバスの縁をしっかりと両手で握り、自分が下に落ちかねないほど身を乗り出していた。それも瞳の前で荒れ狂っているトルネードに、身も心も、完全に奪われているような面持ちで。

 

 無論、美奈子が攻撃用に生み出した魔術である。攻撃の対象はわかりきっていた。フライング・コンドルの面々であった。

 

「ほな、行きまっせぇーーっ!」

 

 宙に浮かんでいる美奈子が、またもや大きな声を張り上げた。その大声を合図にしたかのようだった。黒いトルネードがまるで意思を持つ怪物のように、まっすぐ連中の方向へと進路を定めたのだ。


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