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『剣遊記13』

第四章 響灘上空三十秒!

     (29)

「まったくあとからあとから、ほんまキリがおまへんなぁ☹ いったい敵はんの中心はどこでおまんのや?」

 

 などと美奈子がボヤくとおり、フライング・コンドルの連中は、まるで攻勢に限りがなし。思っていた以上に兵の数が多く、美奈子も孝治も、しだいに疲労の色を濃くしていた。

 

 このひっきりなしの攻撃こそ、彼らの戦術なのであろうか。

 

「師匠っ! こないなったらもう、切り札中の切り札使こうたほうがええんとちゃいまっか!」

 

 師匠――美奈子のボヤキが耳に入ったらしい。現在も浮遊飛行を続行している千秋が、なにやら物騒な発言をしてくれた。

 

「切り札ぁ……なんかようない気がするんは、おれの気のせいやろっかねぇ……♋」

 

 遠くにいるのにはっきりと聞こえたものだから、千秋の発言で孝治は、背中に大量の冷や汗😅。それから大きな戦慄も感じた。

 

 その『気のせい』の現実化だった。

 

「ほな、そないさせてもらいまっせぇーーっ! はぁーーっ!」

 

 気合いの入りまくりである美奈子の奇声が、孝治たちの小型飛行船にまで轟いてきた。

 

「ああっ☆ 美奈子ちゃん、とっておきのぉ魔術さん、一発ブチかますさんするみたいですうぅぅぅ♡」

 

「なんねそれ? その『とっておき☠』っちゅうんはぁ☢」

 

 完全に物事を楽しんでいる千夏に向かって、孝治は先ほどから続く戦慄と冷や汗の思いのまま。胸に込み上がる恐怖感が抑えられなかった。

 

 それも我ながら無理もなし。空中の美奈子が、桐米良を始めフライング・コンドルの連中に向け、ついにと言うか、特大の大声を放ったのだ。

 

「これでお終いにしまっせぇーーっ! かぁーーっ!」

 

 さらに両手の手の平を、前方へと突き出した。もちろん連中のド真ん中の方向へ。とたんに天空にわかにかき曇り、おまけにゴロゴロと、雷雲までがいきなり発生を始めたではないか。

 

 ちなみにたった今の今まで、快晴中の大快晴。

 

「うわっち! あ、あれば見てぇーーん!」

 

 孝治は雷雲の方向を、右手で指差した。

 

「あ、あれって!」

 

『きゃっ☆ ほんなこつ凄かぁーーっ☀』

 

 友美と涼子も、孝治の示した先を見てくれた。そこではなんと、黒い雲の一部が見えない力に引っ張られるようにして、グングンと下の海面まで伸びている光景があった。しかもその雲のもっと下のほう、先端部分はグルグルと、渦を作って回転していた。

 

 ここまで事態が経過をすれば、もう誰でもおわかりであろう。

 

 孝治は叫んだ。

 

「あれってトルネード{大竜巻}ばぁーーい!」


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