『剣遊記13』 第四章 響灘上空三十秒! (28) 「な、なんやあ! あのちんまい飛行船は生きモンなんかいなぁーーっ?」
信じられない反撃を目にした桐米良が、空中で大きな叫びを上げた。またその声は、孝治たちの耳まで届いていた。
「まあ……信じられん気持ちも、ようわかるっちゃねぇ☻」
実際、気球タイプとなって空にプカプカと浮かんでいる小型の飛行船が、実は人の化身であるなどと、いったい今までそのような前例があったのであろうか。
少なくとも孝治は、そんな話は聞いた覚えがなかった。これはフライング・コンドルの面々とて、同じ境遇と心境になるであろう。
「それは置いといて、とにかく攻撃あるのみっちゃよ!」
孝治よりむしろ友美のほうが、ここでは積極的に好戦的とも言えたりして。
「はあっ!」
「うわあーーっ!」
またひとり、衝撃波魔術でコンドルの一員を、響灘に叩き落としてやった。
『なんか友美ちゃん、日頃のなんか、溜まっちょうもんがあったとやろっかねぇ? さっきから言ってることが過激気味っちゃよ☠』
涼子もそんな友美を、なんだか興味しんしん的に見つめていた。
「……やとしたら、それはおれのせいかもしれんちゃねぇ☢」
孝治は涼子とは逆に、我ながら奇妙なのだが反省するような気持ちになっていた。無論このような感じである孝治にも、涼子は疑問の瞳を向けていた。
『どうして?』
涼子の問いに、孝治は答えた。
「だって、友美は日頃っからおれの尻拭いばっかやってくれよんやけ、こげなときにストレスの発散でもせにゃ、胸に溜まるモヤモヤでいつか爆発するかもしれんちゃよ☢ おれもそこんとこ、わかっとらないけんのやけ♐⚠」
「なん勝手んこつばっか言いよっとね! わたし、そげん怖かこつしとらんちゃよ!♨」
当の友美が、今度は孝治に喰ってかかった。
「うわっち! ごめん!」
孝治は慌てて、頭を左右に激しく振った。そこへまた、美奈子からの叱咤が、空の上から飛んできた。
「おふたりはん! 空中で内輪ゲンカしとう場合やあらしまへんのやでぇ! 敵はんはまだ降参もしとらんのやさかい、まだまだ攻撃の手をゆるめたらあきまへんのやぁ!」
「うわっち! 忘れるとこやったぁ☢」
とにかく気を取り戻した孝治は、再び(飾りの)剣を構え直した。
「うわっち!」
おかげで危うく、ユニットバスから外に飛び出しそうにもなったりして。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |