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『剣遊記13』

第四章 響灘上空三十秒!

     (23)

 ちょっと時間を遡る。

 

「ボスっ! あの変なの、なかなか手強いみたいやでぇ!」

 

「ぬわにぃ!」

 

 子分Bが右手で指差す方向を、桐米良も目を凝らして見つめてみた。空を制する者たちの必需品――ゴーグルを装着しているので、視界はおおむね良好だった。その良好な目に写っている物は、まさにたった今襲撃をかけたばかりである飛行船によく似た、ピンク色をした小型の気球なのだ。

 

「な、なんやあ? あのミニチュア飛行船の野郎、自力で前に進みようやないかい?」

 

 空中を飛行しながら桐米良がつぶやくとおり、飛行船型の気球は船尾の尾鰭(?)を左右に動かし、こちらへとドンドン迫っていた。しかも気球の下には、中型のプラスチック製であろう白い入れ物もあった。

 

 これでは正体がまったく不明であるが、少なくとも強力な敵には間違いがないだろう。

 

「なんやようわからへんけど、とにかくなんべんでも総攻撃やあーーっ! わいらフライング・コンドルの怖さとえげつなさ、思いっきり見せつけたれやあーーっ!」

 

「おおーーっ!」

 

 響灘の上空に、野郎どもの大歓声が轟いた。すぐにハンググライダー部隊が翼を翻し、我先にと孝治たちの乗る、小型飛行船に再び殺到した。

 

 これが彼らの攻撃が始まった過程である。


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