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『剣遊記13』

第四章 響灘上空三十秒!

     (22)

「うわぁーーい☀ 孝治ちゃんと友美ちゃん、とってもカッコいいさんですうぅぅぅ♡♡ 千夏ちゃんもぉ、あの風船さんにぃ乗ってもいいですかぁ?」

 

 ヨーゼフを抱いたまま浮遊の術で空中に浮かんでいる千夏が、参入した孝治たちの活躍ぶりを目の当たりにしたのだろう。両方の瞳を、まるで恒星のようにキラキラとさせていた。

 

「まあ、自分で浮いとうより楽しそうやし、乗ってもええんやないか

 

 千秋も一応、肯定的意見でいた。しかし自分自身は、まだ乗る気にはなっていないようだった。

 

「千夏はあっちの風船に乗せてもらいや☞ なんやっちゅうても、千夏はワンちゃん抱いとうからなぁ🐶 それに師匠と千秋は、まだまだイケそうやさかいにな☛☛」

 

「孝治はんたちといっしょなら、うちかて安心ってもんでっせ

 

「はい☆ 行ってきますですうぅぅぅ☀♡

 

 これにて美奈子の承諾も得た感じ。千夏が空中をスイ〜〜っと泳ぐようにして、孝治たちの小型飛行船に向かって飛んできた。

 

「孝治ちゃんに友美ちゃぁぁぁぁぁん! 千夏ちゃんもぉその風船さんにぃ、乗せてくだしゃいですうぅぅぅ♡♡♡」

 

「よっしゃーーっ! 乗れ乗れい☀」

 

 孝治は千夏とヨーゼフを、快く迎えてやった。人数がこれにてひとり増えたわけだが、ユニットバスの大きさは充分。もともと最大でも五人は乗れそうだったし(涼子は例外。霊だから外――と言うわけではない)。また秋恵の浮力にも、ほとんど影響を与えていなかった。

 

「ピンク色の風船さん、とってもぉとってもぉかわいいさんですうぅぅぅ☀♡」

 

 ユニットバスに乗り込んだ千夏が、早速頭上の小型飛行船を見上げて喜びまくっていた。

 

 わんわんわんと、ヨーゼフも可愛く、三つの頭で吠えていた。友美はこれに、やや苦笑気味の笑顔を浮かべている感じ。

 

「ううん、これは風船やのうて、実は秋恵ちゃんの変身なんよねぇ☻ わたしかてほんまのことば言うたら、いまだ信じられん気持ちなんやけどね☝ まあそん証拠って言うか……飛行船のうしろんほうば見てん☝」

 

「うしろんほうですかぁ?」

 

 友美に言われて千夏が、すなおな態度で、小型飛行船の後部に顔と瞳を向けた。すると彼女の反応が、これまた大きな傑作となった。

 

「あれぇ? うしろにおさかなちゃんのぉ、しっぽ……じゃあありませんねぇ☻ しっぽのお鰭{ひれ}さんが付いてますですよぉ? なんだか変さんですうぅぅぅ☀☀

 

 さすがの天真爛漫の権化――千夏も大いに驚いていた。なぜなら彼女のセリフのとおり、秋恵変身である小型飛行船の後部には、見事な魚類の尾鰭がセットされていたからだ。

 

 ふつうの飛行船であれば、そこには垂直尾翼が装備されているものだが。

 

 しかもその尾鰭が左右にペタペタピコピコと動いて、飛行船の進路を上手に操作していた。

 

 孝治もこれには、滅茶苦茶苦笑の気分だった。

 

「文句は言えん立場はわかっとんやけどぉ……まさか魚ん鰭ば飛行船に付ける発想なんち、世界広しと言えど、秋恵ちゃんくらいのもんやろうねぇ☻♋」


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