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『剣遊記13』

第四章 響灘上空三十秒!

     (19)

「うわっち!」

 

 孝治はまたも仰天して、この場で一メートル飛び上がった。

 

 友美がボンベを開栓してガスを送り込めば当たり前な話なのだが、ピンクのボールがプクゥ〜〜っと、みるみる膨張を始めたのだ。

 

「い、いくら秋恵ちゃんがホムンクルス言うたかて、本質は人間なんばい! ほんなこつこれで大丈夫なんねぇ!」

 

 あまりにも非常識極まる瞳の前の現状に、孝治はたまらず大声を上げた。しかし友美は、そんな孝治には構わずだった。彼女自身も相変わらず神妙ながら、テキパキと次の指示を出すばかりでいた。

 

「ビックリする気はわかるとやけど、孝治はそこにあるお風呂(ユニットバス)みたいなんば、そこにあるロープで秋恵ちゃんばくくってや! これも秋恵ちゃんが変身する前に、わたしに頼んだことなんやけ

 

「うわっち! う、うん……☁」

 

 もはや思考力を半分失いかけている孝治は、友美から言われるがまま。今になって気づいたのだが、ロープもしっかりと準備をされていた。それも空を飛ぶ飛行船らしく、緊急用に使う実に頑丈そうな、革製のロープであった。これらロープをきちんと結び、友美は秋恵のボールとユニットバスをつなげる気でいるらしいのだ。

 

「な、なんやようわからんちゃけど、秋恵ちゃんばこれとロープで結んだらよかっちゃね!」

 

『あたしも手伝うけ♡』

 

 涼子もポルターガイスト能力で、孝治に協力してくれた。もちろん秋恵にバレないよう、陰からこそっとの感じで。


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