『剣遊記13』 第四章 響灘上空三十秒! (16) 「五本も要らんとですけどぉ……まあよかですね☺」
ヘリウムの詰まっているガスボンベを前にして、秋恵が感慨深そうにささやいた。それからさらに、若戸や黒崎たちに顔を向けて言った。
「あのぉ……おんちゃんたちの皆さんはぁ、こっからおらんごとなってほしいとですけどぉ……♋」
「はあ?」
「ああ、そうだったがや、これは失礼」
若戸の目は点になったが、黒崎はなんだか、事情を心得ているようでいた。
「では、僕たちは一時退散といきますがや。由香たちもいっしょに来たほうがええがね」
「は、はい……?」
若戸と同じで由香たち給仕係も、まるで腑に落ちないような顔ではあった。それでも一応、黒崎の指示に従った。
「じゃあ、孝治くんたちも早よう☞」
「あ……うん☎」
「はい☏」
孝治と友美も勝美に言われて、この場から出ようとした。無論涼子だけは残って、秋恵の妙な振る舞いを、一部始終全部見物する気でいるようだ。
『なんかようわからんちゃけど、今からホムンクルスの本領発揮ってとこやろっかねぇ☻』
ところがここで、秋恵が意外な発言をしてくれた。
「あっ、いえ……孝治先輩と友美先輩はここにおってもよかですばい⛑」
「うわっち?」
「ええとやろっか?」
孝治も友美も、ますます秋恵の考えがわからなくなる一方。だけど本人がOKと言っているのだから、別に無理をして気をつかわなくてもよいのだろうか。
「じゃあ、孝治に友美君、あとは頼むがや」
本当になんだか事情を知っているような黒崎からも言われ、孝治と友美(と涼子)だけ、秋恵といっしょに残った格好。
「まあ、なんやようわからんとやけど、とにかく秋恵ちゃんがなんかやらかしてくれるっちゅうことやね☺」
初め孝治は、このような軽い考え方でいた。ところがすぐに、秋恵は孝治も舌を巻くような行動を始めてくれた。
「うわっち!」
「ちょ、ちょっと秋恵ちゃん! なん服ば脱ぎよんね!」
驚く孝治と友美の瞳の前で、秋恵がなんと、脱衣を始めてくれたのだ。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |