『剣遊記13』 第四章 響灘上空三十秒! (11) 「また変なんが来よったわぁ☹」
孝治の赤いドレス姿は、むしろ桐米良を困惑させたようだ。
「おい、こん船はイカれた連中の巣窟みたいやで☢ あんまり関わらんほうがええみたいやなぁ☻ レディーのくせして、じゃじゃ馬みたいなんもおるさかいに☢」
「うわっち! なん言いよんねぇ!」
桐米良のよけいなひと言が、孝治を見事にカチンとさせた。
「あんたらせっかく人ん船ば攻めてきよっとに、なん人ば馬鹿にしたこつばっか言いよんねぇ! 人ば見掛けで判断したら、ずえったいに痛い目見るんやけねぇ!」
「やかぁーーしいわい!」
猛然と噛みつく孝治に、今度は桐米良の反撃が始まった。
「わいら空の海賊ことフライング・コンドル様はのぉ、こない見えてもか弱い女子{おなご}には絶対に手ぇ出さへんのやぁ! まあ、たまに例外もあるけどな☻ そやさかい、お嬢ちゃんはさっさと引っ込んで、家で編みモンでもしといたらええんやぁ!」
「編みモンっちなんねぇ!」
孝治だって負けてはいなかった。引き続き猛然の勢いで、ボスの桐米良に喰いついてやった。
「人ば舐めんのもええ加減にしんしゃい! それになんね、空の海賊やなんち、なんか矛盾しちょうような肩書きば自慢してからにぃ! ここで薀蓄ば言わせてもろうたら、空の賊なんやけ『空賊{くうぞく}』っち言うべきやなかとねぇ! それにコンドルにちゃんと、商標権ば許可してもろうとうとや!」
「おっ? コンドルには無許可なんやが、その空賊っちゅう言い方もええのぉ☺」
「うわっち?」
桐米良の前向きな返事で、孝治は思わずズリこけた。ドレス姿なので、パンティー丸見え。
そんな孝治のうしろでは、あとから追ってきた友美が、同じくついてきた秋恵にささやいていた。
「なんか……またレベルの低か口ゲンカが始まったっちゃねぇ☢ 念のために言うとくっちゃけど、戦士の戦い方っち、決してあげなんやなかとやけね☃」
「はい、あたしもメモば取っておきますばい✐」
決して真岐子を真似しているわけでもないだろうが、秋恵が用意していた紙切れに、友美の言葉をひとつひとつ記入していた。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |