『剣遊記12』 第四章 サラマンダー、恐怖の襲撃。 (7) ついでにわかりやすく解説。
「火は水で消えるっちゃけぇ、あいつば川ん中に落としっちまうったぁーーい!」
「先輩っ! それいいナイスアイデアっちゃあ☆」
すぐに裕志も賛同した。そのおまけ、この場にもしも、自分の彼女である由香がおってくれたら、得意の術(由香はウンディーネ{水精霊}である)で火ば消してくれるっちゃにねぇ――などと、少々ムシの良い考えも、一瞬だが裕志の頭に浮かんでいた。
その夢は棚の上に置き、荒生田と裕志は逃げる足を、河原から川の水の中へ、クルリと方向転換させた。
バシャッバシャッバシャッと。
こうなればもう、着ている軽装鎧や黒衣が濡れようが汚れようが、まったくのお構いなし。とにかく助かることが最優先。ただし筑後川は九州で一番大きな一級河川なので、ここが中流辺りであってもけっこう川幅が広く、さらに水深も深かった。
だから荒生田は、大きく叫んだ。
「ゆおーーっしぃ! 裕志ぃ! 『浮遊』ん術ばせえぇ!」
「は、はい!」
慌てて裕志が呪文を唱え、自分と荒生田の体を、ふわりと空中に浮かび上がらせた。
ここで荒生田が叫んだ理由。それもとても大事な問題点。自分がカナヅチであることを、緊急事態になって思い出したからである。
それでもとにかく、安全地帯への逃避なのだ。
「ゆおーーっし! ここまで来たらどげんやぁ☀ こん燃えカストカゲ野郎がやねぇ☠」
荒生田は早くも調子に乗っていた。筑後川中流のド真ん中辺りで、空中に浮かんでいるという好位置を得た展開。これによって、サングラス戦士はすぐに、いつもの傲慢C調ぶりを取り戻したわけ。 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |