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『剣遊記12』

第四章 サラマンダー、恐怖の襲撃。

     (19)

「さっ、とにかくもう帰りましょ✈ そして帰ったら、悪の魔術師退治っちゃね✌」

 

 友美が孝治と荒生田のドツキ漫才を気にもしない感じで、裕志と涼子(友美には見えるから)、それから博美にも向かって声をかけた。

 

「う……うん、でもあげな最強な怪物ば召喚できる魔術師に、ほんなこつ勝てるとやろっかぁ? ぼく……ちょっと不安ちゃけどぉ……☁☁」

 

 ここでいつもの小心が、裕志の顔に出まくっていた。また、そんな魔術師とは対照的。

 

『ほんなこつ、これからが楽しみっちゃねぇ♡♡』

 

 あくまでも傍観者でいられる涼子は、もう期待で胸がパンパンの顔だった。別に両者(涼子と裕志)の間で、意思の疎通など有り得ないはずだが。

 

 そんな友美と裕志、ついでに見えないけど涼子をうしろに従えた格好で、早くもラリーに跨っている博美が、高々と声を張り上げた。

 

「いっぺーじょーとーなほどおもしれえじゃねえかよー♡ おれはこういった話の展開を、ばんない気持ちで待ち望んでいたんだからよー☀」

 

「おい!」

 

 でもって、ようやく荒生田の束縛(お姫様👸だっこ)から解放の身となっている孝治は、このとき河原から立ち去ろうとしている一同に向かって呼び掛けた。

 

「おまえらはよかっちゃよ☠ で、いまだ裸んまんまでおるこんおれは、いったいどげんなるとねぇ☢ 先輩のせいで服も鎧も、ずっと遠くに置いたまんまなんやけねぇ♋」

 

「うわっぷ♋」

 

 孝治の声で振り返った裕志が、たちまち鼻血の大噴出! それと言うのも一糸も身にまとっていないで立っている孝治の姿を、まともに見てしまったからだ。無論胸と下の大事な二箇所を隠しているとは言え、両手を使っているだけの、実に刺激的――かつ魅惑的な姿となって。

 

 その姿を、今も河原に突っ立っている荒生田が見て、ふた言三言。

 

「まあ、命が助かっただけでもメッケもんやなかね、孝治☺ オレは博美さんと、今から悪の魔術師退治に行かにゃならんけ、あとはおめえ自身でなんとかしや♐ これは先輩様からの、愛のムチってもんやけね♡♡」

 

「いっちょも意味がわからんとたぁーーい!」

 

 孝治の怒り心頭である飛び蹴りが、ガスッと炸裂!

 

「ぎゃぼっ! 孝治ぃーーっ! 大事なとこば隠さんねぇーーっ!」

 

 まともに顔面に喰らった荒生田が遥か後方まで吹っ飛び、筑後川にバッシャーーンと、頭から落ちる顛末となった。

 

 この描写もやはり、くわしくは描かないようにする。

 

「おい、いつまでもゆんたく(沖縄弁で『おしゃべり』)してねえで、おれたちゃ先に行くりんどぉ✈」

 

 けっきょく荒生田と孝治のお遊戯(?)を、背中にした格好。博美がラリーの歩みをうながし、さっさと先へと進んでいく。それに裕志と友美、涼子も浮遊で続いていた。

 

「やけんねぇーーっ! おれは裸っち言いよろうもぉーーっ!」

 

 孝治の絶叫など、もはや誰の耳にも入らず。哀れ裸の女戦士(恒例過ぎるけど、元男)はひとりポツンと、筑後川の河原に置いていかれる有様となった。

 

 飛び蹴りを受けて水面にポッカリと、背中を上にした姿で浮かんでいる(ほとんど土佐衛門💀)、サングラスの変態戦士といっしょに。

 

 そうなると、河畔の風が冷たく、裸の肌へと沁み渡ってくる。

 

「はぁーーっくしょーーい!」

 

 てな結末。

 

 孝治、真っ裸のまんまで、次へと続く。


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