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『剣遊記12』

第四章 サラマンダー、恐怖の襲撃。

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「……なんて言うかやっしー? おれは周囲の目なんかどぅまんぎるほど気にしねえで、恥っとか外聞よりも勇敢な行動するじょーとーな男に、そのぉ……惚れちまう性格なんだよー♥ だからよー、やーの態度は立派だよ、しかますぐれえによぉ……☆」

 

「やー……確か沖縄の方言で、『おまえ』ってこっちゃねぇ……ってオレんことけ?」

 

「そう、やーってぇ……そのぉなんて言うかやしがぁ……じょーとーないきがーだねぇ♥」

 

「今ごろ気づいたんけ? そうたい、オレは上等な男やけんねぇ☀」

 

 周囲に裕志や友美たちがいるのも構わない感じ(涼子もね)。ふたり(荒生田と博美)の間を取り巻く空気の温度が、なんとなくほのかな温かみを帯びてきた。

 

 そのほのかな温かみの渦中にいる孝治は、荒生田の腕にかかえられたまま、上目遣いで声をかけてみた。

 

「先輩……☠」

 

 荒生田はむしろ面倒臭げにして、後輩に目を下ろした。

 

「なんね? せっかくのええ雰囲気ば、野暮にするんやなかと☁」

 

 孝治は構わずに続けた。

 

「そん雰囲気ば壊してほんなこつ悪かとですけどぉ……いつまでおれば、裸んまんまでおらせるつもりなんですか?」

 

「なんや、そげんこつね♠」

 

 そうは言っても荒生田は、今も決して、裸の孝治を手放そうとはしなかった。孝治はだんだんと、イラつく気分になってきた。

 

「もうサラマンダーもおらんごとなったし、いい加減おれば下ろしてくれたってよかっち思うっちゃですけどぉ……☠」

 

「そうはいかんとたい☢」

 

 実際に危機的状況は過ぎ去ったはずだが、それでも荒生田は、頭を縦に振ろうとはしなかった。

 

「サラマンダーが滅んだとはいえ、まだまだ危険が本当にのうなったとは、誰にも言えんっち思うっちゃね♥ やけんここは、オレがおまえば最後まで守ってやるっちゃけ♡ ただしそん報酬としてやねぇ、この気持ちんよか感触ば、もうちっと続けさせてくれんね♡♡」

 

「危険なんちいっちょもなかぁーーっ! けっきょく最後のセリフがあんたの本心やろうもぉ!」

 

 とうとう孝治の全身の血液が沸騰。それから現在、人からかかえられたままの格好で(くどいけど、お姫様👸だっこ)、器用にも下から強烈な右のアッパーカットをガツーンと喰らわしてやった。

 

 荒生田の下アゴを狙って。

 

 もっともこの程度の結末は、いつもの定番であるからして。


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