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『剣遊記12』

第七章 戦士はつらいよ、北九州立志篇。

     (14)

「往生せえやあーーっ!」

 

「しゃーーしぃーーっ! おまえが往生せえーーっ!」

 

 襲いかかる衛兵どもを斬っては捨て、斬っては捨て。荒生田が縦横無尽の大乱闘! ついに――と言うか、早くも大門隊長との一騎打ち!

 

「きょうこそは年貢の納めどきと言ったはずだぁ! おとなしゅうお縄につかんかぁ!」

 

「しゃーーしぃーーったい! オレには愛する故郷ば守る役目があるっちゃけぇ! おまえのような悪代官ば、ずえったい許すわけにはいかんとやけぇ!」

 

「ならば死ねぇーーっ!」

 

「おまえが死なんけぇーーっ!」

 

 とうとう大門の、頭の血管がブチ切れた。愛刀の『虎徹』を振り上げ、荒生田の脳天目がけて斬りかかる。

 

 荒生田の剣と大門の日本刀が、カキーンと激しい火花を撒き散らす。

 

 その刹那!

 

 刃と刃の激突に、ポキッと敗れた側は、意外にも日本刀だった。

 

「な、ぬぁにぃーーっ! こんな馬鹿なぁーーっ!」

 

 驚きのあまりか大門が、両目をバシッと開いて、先端を失った自分の刀を凝視した。そのため当然、隙だらけ。この機を逃さず荒生田が、渾身の一撃を悪の(いつの間に?)衛兵隊長の頭に、ポカンとお見舞いした。

 

「うぎゃああああああああああっ!」

 

 大きなタンコブをこしらえ、かくて悪は滅びた。

 

 この、いかにも絵になるような名場面にて、剣を大きく右手で構えた荒生田が、カッコよく決めの名口上を述べようとした。

 

「赤城の山も今宵限り……はっ、はっ、はぁぁぁぁっぅっくっしょぉぉぉぉぉぉい!」


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