『剣遊記\』 第六章 大海賊の落日。 (3) 「うわっち! 遅かったけぇ!」
海賊船の舳先が洞窟から出かかったところで、奥の通路から帆柱を先頭に、孝治たちのお出ましとなった。
孝治たちは立ちはだかる雑魚海賊どもを蹴散らし、首領を追って、ようやくここまで追い着いたわけ。しかし、あと一歩のところで間に合わなかった。
「こんバカちぃーーん! 大事な子分どもば見捨てて逃げるつもりっちゃねぇーーっ!」
くやしさのあまり、孝治は地団太を踏んでわめき立てた。
実際に馬図亀は、子分のほとんどを置き去りにして逃げるつもりのようだった。船上から孝治たちに向け、大きな罵声を浴びせるほどであるから。
「けっ! なんとでも言えばええんやでぇーーっ! 残ったおめえらは『あいつ』のエサになるんやからなぁーーっ!」
「『あいつ』っちゃなんねぇ?」
「知らん✋」
馬図亀の捨てゼリフに、孝治は『?』の声を上げた。それに帆柱が、答えにならない答えを返したときだった。突如別の所にあるらしい洞窟の方角から、ズガガガガアアアァァァァァァンンッッと激しい爆発音が轟いた。
それでも火薬の量は、大したほどではなかったようだ。これで洞窟全体が崩れる事態にはならなかったが、海賊首領の捨てゼリフを信じれば、これは絶対にただの爆発ではないに決まっていた。
「気ぃつけや! なんか出てくるかもしれんちゃぞ!」
「うわっち! はい!」
帆柱と孝治は出てくる『あいつ』とやらに備え、そろって槍と剣を構え直した。
「……なんか嫌ぁ〜な予感がするっちゃよねぇ〜〜☢☠」
いつの間にか、孝治の右横に来ている友美も、得体の知れない『あいつ』とやらのために、全身の緊張が抑えられない感じでいた。 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |