『剣遊記\』 第六章 大海賊の落日。 (2) 「首領、仕掛けがみんな、完了したでごわす✌」
「よっしゃ、ええで♡」
腹心である美蝿からの報告を受け、馬図亀が大型帆船の甲板で、満足そうにうなずいた。
「今からいっきに、『あいつ』の檻が爆発やいもーすー✋ そぎゃんなりゃ、あとは自由ん身になった『あいつ』が、戦士どもばよいなこてなおして(鹿児島弁で『どうにか片付けて』)くれるでごわんど☻」
美蝿は馬図亀の命令を受け、たった今まで数人の部下といっしょに、『あいつ』が収容されている檻の入り口に、強力な爆薬💣を仕掛けてきたところだった。
途轍もなく凶暴な『あいつ』を野放しにしてしまうわけだが、あとの惨劇など、もう知ったことではない。
「よっしゃ! 船を出すんや! こん島から逃げ出すでぇ!」
「へい!」
馬図亀の号令で、配下たちが錨{いかり}を上げた。
ここは鬼ヶ島の東側海岸にある、大洞窟の入り口。馬図亀は外海からはほとんど見えないこの洞窟内に、自慢の大型船を隠していたのだ。それも外洋でも航行が可能な、大型の帆を何枚も張っている本格的な海賊船を。
もちろん、これこそ海賊の定番。一番前の帆に描かれているドクロの旗印が、いかにもそれっぽくて猛々しく感じられていた。 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |