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『剣遊記\』

第六章 大海賊の落日。

     (12)

 そのまま両者は、巨大な水しぶきを上げて海面に雪崩れ込んだ。また、これによって湧き起った大波が、海上で溺れていた海賊たちを、一気に鬼ヶ島まで押し流した。

 

「おがあぢゃあーーん!」

 

「こんな生活もう嫌やぁーーっ!」

 

 海賊とはいえ、彼らは仮にも海の男のはず。それがこのようなみじめな姿を見せる結果になろうとは。戦士の情けで助けて回る孝治も、なんだかとても目を当てられない気分でいた。

 

「もう、しっかりしろっちゃねぇ〜〜☹ それでもほんなこつ、瀬戸内海の大海賊っちゃね☻」

 

 もちろん助けた面々の中には、首領の馬図亀と一の子分である美蝿の顔も混じっていた。それが今や、ふたりともすっかりの意気消沈。砂浜で不貞腐れているように座り込み、もはや大海賊の風格など、微塵も残ってはいなかった。

 

「…………☠」

 

「…………☢」

 

 無論助けた海賊は、あとで反逆されたら面倒もの。そこで友美が『睡眠』の術をかけ、全員おとなしくさせていた。

 

「スリープっ♡」

 

 こうしてとりあえず、海賊たちの救助が終了。孝治と帆柱は、再び沖合いで展開されている海戦に注目した。

 

「永二郎んやつ……シー・サーペントにケンカば挑むなんち……メチャクチャやおない真似ばおっ始めてからにぃ……☢」

 

「たぶん……っち思うが、船乗りの心意気で、溺れちょう人ば身捨てておけんかったんやろうなぁ☀」

 

 孝治と帆柱のふたりは岩場まで駆けつけ、沖の戦いの状況を眺めていた。その足元の海面から、桂がバシャッと顔を出した。

 

「うわっち! 桂やない! ずいぶん心配したっちゃけね」

 

 桂の無事をこの目で見て、孝治は一応安堵の息を吐いた。しかし桂は孝治に応えるよりも、沖で戦う恋人のほうだけを見つめていた。

 

「大丈夫やが……永二郎さんは、あんなヘビの化けモンなんかに負けんのじゃけん✊」

 

 孝治はこのとき思った。

 

(それば言うたら真岐子ちゃん(彼女はラミア{半蛇人})が、メチャクチャ腹かきそうっちゃねぇ〜〜☠)


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