『剣遊記[』 第五章 フェニックス作戦第一号。 (9) ここで少し、話はそれる。当の荒生田は裏で裕志を相手に、こそこそと悪だくみの真っ最中でいた。もちろん、孝治や清美たちから、少し離れた所で。
「裕志、あとでよかけ、三枝子さんからフェニックスの血ば分けてもらえるよう、話ば着けとけよ☻」
「えっ? どげんしてですか?」
裕志はピンとこない顔付き。無論荒生田のポカリを、即時で喰らう破目となった。
「ばやろい! フェニックスの血が高こう売れるっち最初に言うたんは、おめえやろうも!」
「あっ、そ、そうでした☆」
裕志もやっと、思い出したような感じでうなずきを返した。
そもそも荒生田が、フェニックス探しに参加した真の目的は、これ――に尽きる。それこそフェニックスが忌み嫌う、邪まな人間の典型と言えるのかも。
だが幸い、三枝子は現在、清美と孝治たちから囲まれ、今の陰謀的会話を耳に入れてはいなかった。 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |