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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

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「ゆおーーっしっ! 勝負が着いたみたいっちゃぞぉーーっ!」

 

「やったぁーーっ!」

 

 荒生田が歓喜の雄叫びを上げ、周りの後輩たちからも(もちろん孝治も)、自然発生的な万歳三唱が湧き上がった。

 

「ばんざぁーーい🙌! ばんざぁーーい🙌! ばんざぁーーい🙌!」

 

 たった今まで、船酔い状態で体調不良を訴えていた体のはずなのに、みんな現金なものである。

 

 そんな観客たちが見守る前。フェニックスは倒れているサイクロプスの周囲を、しばらく旋回し続けていた。だけど、これでもう大丈夫と判断したようだ。翼を自分の棲みかである、根子岳の山頂へと方向転換させた。

 

 このときフェニックスが、一行の真上を高速で通過。

 

「あら?」

 

「どげんしたっちゃ? 友美?」

 

「いえ……今フェニックスがこっちばチラッっち見て、ついでにウインク😉までしたような気がしたっちゃけどぉ……♋」

 

 友美と孝治にこのような会話をさせる仕草を残して、フェニックスは山の彼方へと消えていった。

 

「まっ、よかっちゃね☺」

 

 フェニックスへの畏怖感と恐怖心が、今でもやや身に沁み付いている孝治ではあった。だけど行ってしまえば、あとは空元気を復活させるだけ。

 

「まあたぶん、フェニックスかてサイクロプスばしばき倒したもんやけ、きっと気が晴れたっちゃよ☀」

 

「……そげんことっちゃね☺」

 

 多少思いに違いがあるようだが、友美も孝治のセリフに、一応納得してくれた。

 

『まあ、ふたりがそげん風に思うちょるんやったら、それでええかもね☆』

 

 唯一真実を理解している涼子が、これも孝治と友美には聞かれないよう、またもやそっとつぶやいた。それにしても幽霊としての特性上仕方がないのかもしれないが、涼子は人の秘密を自分の胸にかかえ込んでしまう事例が、真にもって多いようだ。しかも、なまじ言って良いことと悪いことの判断ができるだけに、かえってかかえる秘密の在庫が増える傾向にもなっていた。

 

『あ〜あ、幽霊かて悩めることが多かっちゃもんやねぇ〜〜☻』

 

 涼子はここでも、気持ちだけのため息を口から吐いた。


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