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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

     (31)

 それら下々が、変な苦労をしている頃になってからだった。ついにサイクロプスの足が、ゆらゆらとふらつき始めていた。

 

 要するに、めまいが限界に達したのであろう。グボォォォォォォ――というハッタリが丸出しの吼え声でさえ、今では弱々しく聞こえるほどに。

 

(今んうちばい!)

 

 三枝子はこのチャンスを見逃さず、旋回の途中で地面に向けての急降下。かぎ爪でひとつまみの土くれをつかみ取り、すぐにまた空の上へと舞い上がった。

 

 その土を、よろめいているサイクロプスの顔面を狙って、バシャッと投げつけた。

 

 グバガァァァァァァァァッ!

 

 単純そのものだが、実に効果的な目潰し攻撃だった。これによりひとつしかないサイクロプスの目が、一時的であるだろうが視力を喪失。吼え声を上げながら、慌てて顔にかかった土くれを、両手で掃い落そうとした。

 

 そこへガシッッと、背後からフェニックスが体当たり!

 

 グボガボォォォォッ!

 

 サイクロプスが前のめりで倒れた所に、ちょうど大きな岩があった。

 

 もちろんガツンッと、まともにおでこと衝突。これくらいで死ぬようなヤワな怪物ではなかろうし、むしろ岩のほうが粉々に粉砕されるほどの石頭ぶりを発揮した。

 

 だがそれでも、脳味噌に大きな衝撃を受けたわけだ。サイクロプスはそのまま地面に仰向け。ピクリとも動かなくなり、おまけに口からブクブクと、大量の泡までも噴き出した。


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