『剣遊記[』 第五章 フェニックス作戦第一号。 (29) フェニックスからすっかり馬鹿にされた格好となって、どうやら完全に憤慨をしたらしい(もともとから短気の傾向もあるし☢☠)。サイクロプスが足元にある岩や木々をつかんでは投げつかんでは投げして、フェニックスに向け、闇雲な反撃をおっ始めた。
それをまた右に左にひらりとかわし、フェニックスはしだいに、サイクロプスの周囲を旋回する飛行態勢を取っていた。
しかしサイクロプスは、フェニックスがいったいなにをしようとしているのか。まったく理解ができていない様子。とにかく威嚇の意味だけだろうか、グガバァァァァァァッ!――と大きく吼え立てた。もちろん本職の格闘士である三枝子が、このようなコケ脅しに動じるはずはなし。人間同士の戦いのときでさえ、ハッタリをかます対戦相手は、常にあとを絶たなかった経験もあるので。
教訓――ハッタリ屋は百パーセント弱い。
それはとにかく、端から見てもよくわかるとおり、三枝子はサイクロプスの周囲を何周も旋回。ひとつしかない目を、徹底的に撹乱させる作戦にでようとしていた。これは実際に、格闘技の試合のときでも相手の周囲をグルグルと走り続け、ついには目を回させて倒した実績があっての作戦なのだ。
それでもまだまだ、決定打とはならなかった。
(フェニックスとしての戦い方なんち知らんけ、これしか方法なかけど……思ったとおり、サイクロプスってほんなこつしぶとかねぇ〜〜☠)
まさに三枝子の考えたとおり。サイクロプスはその巨体のおかげもあってか、作戦の極意に沿ってグルグルと回ってくれてはいるものの、なかなか倒れはしなかった。
(こげんなったら体力勝負ばい!)
戦いもここまで到れば、もはや小細工などは不要。三枝子はさらに飛行速度をアップさせ、サイクロプスの周りを大旋回。またサイクロプスも律儀に、目と体で三枝子に付き合ってくれていた。 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |