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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

     (25)

 この決戦の唯一の観客である清美や荒生田たちが、ここなら安全と思われる場所に、ほうほうの体で集結していた。

 

「おう! ぬしらも無事やったばいね☠☻」

 

 その安全で、しかもけっこう見晴らしの良い高台は、清美と相棒の徳力が、先客として陣取っていた。そこへやっとの思いの様相を見せつけながら、荒生田と裕志も駆けつけた。先に見つけていた高台は、やはり目立ち過ぎだったので。

 

「相変わらず悪運の強か男ばいねぇ☻ あたいなんぞとっくに、サイクロプスからしばかれようっち思いよったとばい☠」

 

「じょ、冗談やなか……✄」

 

 ふらふらとした千鳥足状態で登り坂を上がる荒生田には、清美のからかいに言葉を返す気力も元気もなかった。

 

 それからとにかく高台に着いたところで、眼下で繰り広げられているまるで神話のような壮絶な光景に、荒生田はおのれの三白眼をしっかりと向けた。

 

「阿蘇にサイクロプスが棲んじょったなんち、誰も言うちょらんかったけねぇ✐ 地元の連中もやけど✕ それがフェニックスが飛んできたおかげで命拾いばさせてもろうたっちゃけど……なしてフェニックスがサイクロプスにケンカば売りようとや?」

 

 これにぶっきらぼうな感じで、清美が答えた。彼女の目線もやはり、今にも戦おうとしている二者(フェニックスとサイクロプス)に向けられていた。

 

「あたいかて知らんばい✄ ばってんそれもあるとやけど、ここはもう一世一代の大勝負✌ じっくり高見の見物ばさせてもらおうやないけ✍」

 

「それもそうっちゃね☻」

 

 こうして野次馬を決め込む分に関しては、荒生田も清美に異論はなかった。それよりもこの際、未来亭への絶好な土産話ができた幸運を、大いに喜ぶべきであろう。

 

 もっとも、それはそれでけっこうな話ではあった。だけど清美も荒生田も、孝治と友美の消息を、今やすっかり忘れきっていた。


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