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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

     (24)

 今、三枝子の精神によって完全にコントロールされているフェニックスが、サイクロプスに挑もうとしていた。

 

(確かにこれって、神にも悪魔にもなれる力やねぇ♋ これほどの力ばうち……使いこなせるんやろっか?)

 

 三枝子の心の奥底では、高揚感と怯えが矛盾しつつも同居中。しかしもう、ここまで来ては、あとには絶対引けないところでもあった。

 

 現実に、瞳の前には敵がいた。

 

 それも、仲間に危害を加えようとしている、強大な怪物が。

 

(こげんなったら、もうやるだけたい!)

 

 三枝子の決意は固まった。

 

 それにしても、初めて翼を広げて空を飛んでいるにしては、まるで産まれたときからその力が身に付いていたかのようだった。三枝子はしなやかに、空中をまるで大海のようにして泳いでいた。

 

 まさに上昇下降も方向転換も思うがまま。自分に体重がある感覚でさえ、どうかしたら忘れてしまうほどだった。

 

(これならやれるばい!)

 

 キュアアアアアアアアアッ!

 

 改めて決心の着いた三枝子は、初めてフェニックスとしての雄叫びを上げた。

 

 これに負けじと、地上のサイクロプスも吼え返した。

 

 グボガアアアアアアアアアッ!

 

 空対陸である怪物同士の決戦が、今、こうして始まったのだ。


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