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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

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(これがフェニックスが、うちに授けてくれた……力💪なんけ?)

 

 優雅に翼を羽ばたかせ、サイクロプスの頭上を舞うフェニックスの精神には涼子が考えているとおり、三枝子の心が宿っていた。

 

 それはふたつの意識が、融合を果たしたときだった。フェニックスの精神が教えてくれた話を、三枝子はたった今聞いたばかりのように覚えていた。

 

『うちの体と能力そのものを、あーたにお貸しいたします☞ やけん、あーたが天寿ばまっとうし、黄泉の世界に旅立たれるそん日まで、あーたの思いどおりに使ってください☺ そん間、うちの心は眠りについちょりますけ♠』

 

(ちょ、ちょっと! それってどげな意味ね? あなたの体ばこのあたしが使うなんち、いったいどげんすればよかと?)

 

『正に使うか邪に使うか……それはあーたのお気持ちしだいです♐ つまり、うちの力ば得たあーたは、神にも悪魔にもなるっちことができますと☛』

 

 フェニックスの心は三枝子の問いには一切答えず、一方的な説明ばかりを繰り返した。そのため三枝子は仕方なく、彼女の話に沿う格好での会話を進めるしかなかった。

 

(それやったらあたし……神……なんてガラやなかけ、人間まんまでよかですけど……絶対悪魔になんかなりましぇん! これだけはあなたに誓います!)

 

『それば聞いて安心しました☺ では、うちの意思は眠りに入りますけ☟』

 

(ちょっと、まだ待ちんしゃいよぉ! まだまだいろんなことば訊きたいことが山ほどあるんやけぇ!)

 

『…………』

 

 三枝子の精神がいくら呼べど叫べど、フェニックスの心はもう、応えてはくれなかった。

 

(ほんなこつ眠りんしゃったばいねぇ♋)


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